街コンで知り合って付き合った彼と連絡が取れない。職場まで押し掛けてもいいだろうか――。そんな悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿された。投稿者の女性は、音信不通の状態が「別れたいという彼の意思表示」だということも十分理解している。しかし、ちゃんと会って話をしてから別れたいのだという。
女性は、彼の自宅の住所は知らないが、その最寄り駅や職場の場所は把握している。連絡が取れないなら、自宅の最寄り駅や会社の近くで待ち伏せたり、会社に電話したりすれば、話ができるはずだと考えているようだ。
「一度軽く話すことができれば、以降付きまとうつもりはありません」ということだが、交際相手の職場に押し掛けたり、会社の近くで待ち伏せたりすることは、犯罪にならないのだろうか。藤本尚道弁護士に聞いた。
●ストーカー規制法の対象になりうる
「今回のケースの女性の真意は『一度で良いから会って話をしたい』というものです。一見、問題がないように思えますが、実は大きな落とし穴が待っています。まさに『ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)』の適用場面だからです」
女性の「一度でいいから・・・」という思いも、法に抵触してしまうのか。
「まず、ストーカー規制法は、『つきまとい等』と『ストーカー行為』の2つを規制しています。
ここにいう『つきまとい等』とは、
(1)特定人に対する恋愛感情などを充足する目的で、
(2)その特定人などに対し、
(3)法律が定める行為を行うこと
と説明されています。
この女性は交際相手への恋愛感情が高まって、ともかく彼に会いたいがゆえに行動しているわけですよね。ですから、(1)と(2)の要件にあてはまります。
そして、法律は(3)の行為として、8つの類型を掲げています。すべての紹介は省きますが、女性の行為は、その8つのうちの『つきまとい、待ち伏せ、押し掛け等』と『面会や交際の要求』の2つの類型にあてはまるのです」
「つきまとい等」にあたり、規制の対象になる可能性があるようだ。
「たしかに、この段階で女性は一度だけと考えて行動していますが、男性が女性を避けて会おうとしない状況が続くと、どうでしょうか。どんどん行動がエスカレートしてしまう可能性もありますよね。
このように同じ一人へのつきまといを繰り返すような状況になると、一歩進んで『ストーカー行為』に該当してしまいます」
そうなると、何が待っているだろう。
「『つきまとい等』を繰り返して『ストーカー行為』に発展してしまった場合、警察が警告を発したり、公安委員会が禁止命令を出すことができます。禁止命令に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。
また、警告や禁止命令がなくても、ストーカー行為の被害者から告訴があった場合、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることがあります。
この女性にとっては、どこか釈然としない部分もあるでしょう。けれど、警察のご厄介になるようなドロ沼恋愛だけは避けていただきたいところです」
藤本弁護士はこのように話していた。