警視庁などが2017年5月に摘発した国内最大規模の児童ポルノDVD販売サイトをめぐり、このサイトからDVDを購入・所持したとして、約870人が児童ポルノ禁止法違反の疑いで書類送検された。
報道によると、警視庁が、このサイトを摘発した際、関係先から約7000人の購入リストが見つかった。その中には、小学校教員や警察官、地方議員が含まれていた。警視庁は、事件化が可能と判断した約2700人分のデータを全国の警察本部に提供したという。
この前代未聞の大規模摘発を受けて、児童ポルノ事件にくわしい奥村徹弁護士は「児童ポルノDVDを所持している人は、今すぐ物理的に破壊するように!」と呼びかけている。どういう理由があるのだろうか。
●原則として、単純所持だけでは「現行犯逮捕されない」
「児童ポルノ単純所持罪は、その名の通り、『児童ポルノを所持する』ことを処罰するものです。ただ、捜査権の乱用を防ぐために、『自己の性的好奇心を満たす目的』『自己の意思に基づいて所持するに至った』という2つの要件が付けられています。
この要件は客観的・外形的証拠により立証することが必要となります。そのため、警察庁では、『原則として現行犯逮捕はしない』という通達を出していました。現在も、警察庁管轄では、この原則が徹底されています」(奥村弁護士)
報道ベースでは、単純所持罪で逮捕されたのは、次の2ケースだ。
(1)海上保安官の容疑者によるもので、銃刀法違反(模造拳銃の所持)を伴う事件について海上保安部が通常逮捕したケース
(2)強制わいせつ致傷で逮捕された容疑者について、単純所持罪で通常逮捕したケース
「『自己の性的好奇心を満たす目的』と『自己の意思に基づいて所持するに至った』という要件が、慎重に運用されていると思います。『単純所持で逮捕』などと、不安をあおって依頼を誘うような弁護士には警戒してください」(奥村弁護士)
●物理的破壊するときの注意点
したがって、児童ポルノDVDを所持している人は、今すぐ物理的に破壊すべきということだ。その際の注意点はあるのだろうか。
「販売者が検挙されたときに捜索・差押を受けることを考えると、
(a)媒体(DVD)に児童ポルノが保存されていることを示す場面
(b)工具で破壊している場面
(c)媒体が破壊された場面
について、スマホ(携帯)のカメラで記録しておけば、捜索差押を受けたときに破壊したことを説明しやすいと思います。
また、破壊したので、捜索・差押も回避したいという相談もよくあります。弁護士に相談した上で、販売者を検挙した警察に相談して、破壊したことを説明すれば、捜索・差押を回避できることがあります」(奥村弁護士)