「深夜1時ごろにインターホンが鳴り、突然のことで何ごとかと驚きました」。東京都新宿区の区議・伊藤陽平氏は5月11日のブログで、嫌がらせの被害にあったことを報告した。
ブログによると、自宅に注文した覚えのない中華の出前があったという。店側に確認したが、届け先の住所は間違いなく伊藤氏の家。こうした経験は初めてではなく、過去には頼んでいないのに宅配ピザが届いたこともあったそうだ。
伊藤氏は、これらを第三者からの「嫌がらせ」と判断。「政治家に対する嫌がらせは、人権がない仕事、有名税だから仕方がない、などと黙認されてしまいますが、やはりおかしいと思います」と憤った。そのうえで、意見がある場合は、ブログやSNSなどで連絡してほしいとつづっている。
また、出前した料理店は、伊藤氏が注文していないと説明すると、お金を受け取らず、そのまま帰って行ったという。料理や配達の手間が無駄になった形だ。「嘘」の出前をさせる嫌がらせは、法的に罰せられることはないのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。
●店に対しては罪が成立するが…
「注文した覚えのない出前を他人に届けるといった嫌がらせは、それ自体では犯罪にはなりません。従って、今回の行為は、伊藤氏に対する行為としては、罪に問うことはできません。
もっとも、嫌がらせとセットで金品を要求した場合などは、恐喝罪に問われる可能性がありますし、金品以外の何らかの行動を要求した場合には、強要罪に問われる可能性があります。
また、民事上は、繰り返し同様の行為を行うと、伊藤氏の生活の平穏を害したとして、慰謝料等の支払義務が生じる可能性があります」
では、料理店に対してはどうか。
「刑法233条は、『偽計を用いて,人の…業務を妨害した』場合には、偽計業務妨害罪という犯罪が成立すると定めています。今回の事例では、出前を注文した人物は、伊藤氏ではないのに、伊藤氏のフリをして注文をしていますので、『偽計』を用いているといえます。
また、その結果、料理店側は料理を作ったり、配達したりした時間が無駄になり、他の業務に支障が生じたおそれがあります。従いまして、料理店との関係では、偽計業務妨害罪が成立すると考えられます」
どの程度の罪になるのだろうか。
「偽計業務妨害罪に対する刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています。軽い気持ちの悪戯としては、大きな代償だといえると思います」
中西弁護士はこう述べていた。