親が子どもの名義で借金をしている——。弁護士ドットコムにはこうした相談が複数寄せられています。
ある女性は、父親が自分の名義で借金をしていたことが分かりました。今までは父親が少しずつ返済していたそうなのですが、脳の病気になってしまい、今後の返済が厳しい状況になってしまいました。
現段階で月に約3万円の返済があり、今後の利息を除いても、合計で200万円程度の残債があります。
こうした場合、相談者は自分の借金でないことを証明するのは難しいのでしょうか。また返済しなかった場合、相談者にペナルティが課されるのでしょうか。山田智明弁護士に聞きました。
●自分の借金とされてしまう?
——相談者は身に覚えがないとのことですが、自分の借金となってしまうのでしょうか。
「他人に勝手に署名されたもので自身の借金ではない」と主張する場合、通常は借用書の署名の筆跡などによって、勝手に署名されたことなどを証明することが考えられます。
ただし、相談者が未成年の場合、法定代理人は親権者となります。
両親と子どもで生活している家庭で、母親は子ども名義での借金に反対していたのにもかかわらず、父親が勝手に「自分と妻双方がOKしている」としてサインした場合も、相手方である債権者が母親が反対していたことを知っていたなどの事情がない限りは相談者の借金として扱われることになります。
ただ、そのような場合でも、父親が相談者のためではなく自己や第三者の利益のために借金をした場合は法定代理権の濫用となります。債権者が濫用の事実について知っている場合や知らないことについて過失がある場合には、本人に責任が及ばないと判断した最高裁判例があります。
そのため、どのような使途に使用されたかといった事実関係や債権者の審査状況等によって結論が左右されることになるでしょう。
また、両親が離婚しており父親が親権をもっている場合などは、法定代理人として署名をしたということも考えられます。その場合には、相談者の父親の署名だとしても、原則として相談者の借金として扱われます。
●もし返済しなかったら?
——もし相談者の借金とされた場合、返済しなかったらどうなりますか?
仮に相談者の借金とされ返済を怠った場合には、債務不履行となり遅延損害金などの民事上の責任は生じますが、単なる債務不履行のみでは刑事責任は生じません。
資力の関係で返済が難しい場合は、法的整理(破産、民事再生)や任意整理をすることで対処することも考えらえます。
また、相談者に支払能力がない場合でも、兄弟は別人格なので、相談者の債務を相続等で承継する場合等の例外的な事情がなければ返済義務はありません。