- 財産分与
「離婚したくない」から始まったご相談で、依頼者様の気持ちの整理に寄り添いながら、財産分与で納得の解決を実現した離婚調停の事例
相談前の状況
依頼者様(妻側)が、夫からの申立てによる離婚調停の相手方となった事案です。婚姻期間は約20年以上に及びました。
ご相談当初、依頼者様は「離婚したくない」というお気持ちを強くお持ちでした。別居後も夫婦で食事に出かけるなど交流が続いており、依頼者様は、夫が離婚を求める本当の理由は夫婦関係そのものではなく、嫁姑関係や、夫が抱える親族・仕事上のストレスにあるのではないかと感じておられました。「夫の気持ちを受け止めたい」「裁判で争うことまではしたくない」という思いから、調停ではまず関係の修復を図りたいというご意向でスタートしました。
解決への流れ
▼ 当職の関わり方 ― 気持ちの整理に寄り添う伴走
離婚事件では、依頼者様のお気持ちが時間とともに変化していくことが少なくありません。本件でも、当職は方針を急がず、複数回の面談を重ねて依頼者様のお話をじっくりと伺いました。
夫婦関係や親族との関係について、依頼者様がご自身の言葉で思いを整理していかれる過程に寄り添い、当職は傾聴を重ねました。その結果、依頼者様はご自身の意思として、離婚を受け入れたうえで、その後の生活の基盤となる財産面の条件をしっかり確保する、という方針に着地されました。心情面で無理のない、ご本人が納得できる形で方針を定められたことが、本件の出発点となりました。
▼ 争点となったポイント ― 夫の資産の把握
方針が定まった後の焦点は、財産分与の前提となる夫の資産をどこまで正確に把握できるかでした。夫は複数の会社の役員を務めるなど一定の資産を有していましたが、開示された財産目録には不自然な点・不足がありました。
•基準時の残高が示されていない預貯金 … 財産分与の基準時(別居時)ではなく、それより後の時点の残高しか開示されていなかった
•開示されていない口座の存在 … 夫名義の口座について、開示されたもの以外にも役員報酬が振り込まれる別口座が存在する疑いがあった
•非上場株式の評価方法 … 夫は自身が関与する会社の株式について過去数年の平均値による評価を主張したが、これは評価額を低く抑えるための独自の見解にとどまるものだった
•株式取得原資の不透明さ … 別居の基準時点で株主でなかったはずの会社の株式について、その後の取得原資の説明が求められる状況にあった
•共済・生命保険等の未開示 … 小規模企業共済・中小企業退職金共済・生命保険等、財産分与の対象となる資産の開示が不十分だった
▼ 当職の対応と解決
当職は、依頼者様からの詳細な聞き取りと手元の資料(通帳の入出金履歴等)を丹念に精査し、主張書面を複数回にわたって提出して、争点ごとに具体的な根拠を示しながら開示を求めました。
たとえば、夫名義の口座から毎月「中小企業共済」名目の引落しがある事実を通帳から指摘して共済加入の事実を明らかにしたり、別口座の開設経緯に関する依頼者様の記憶といった具体的事情を積み上げて、隠れた収入・口座の存在を追及しました。残高証明書が手書きで作成されているという不自然な点も見逃さず、取引履歴の開示を求めました。非上場株式の評価についても、代表取締役の変遷を踏まえ、平均値ではなく現在の評価額によるべきことを主張しました。
こうした粘り強い開示請求と主張の積み重ねにより、夫側の財産の実態に迫り、最終的に財産分与および年金分割を含む条件で、依頼者様が納得できる内容の調停離婚を成立させることができました。ご相談当初に望まれなかった離婚という結論に至りながらも、依頼者様ご自身が気持ちの整理を経て選び取った、前を向くための解決となりました。
菊田 利昭 弁護士からのコメント
離婚のご相談では、当初のお気持ちと最終的なご意向が変わっていくことはごく自然なことです。当職は、結論を急がず依頼者様の心情に寄り添うことを大切にしており、ご本人が納得して方針を選べるよう伴走します。そのうえで、資産をお持ちの方の離婚では、相手方が財産の一部を開示しない、評価を低く見せようとするケースも少なくありません。提示された資料を鵜呑みにせず、通帳の記録や取引の経緯といった細部から矛盾や不足を一つひとつ拾い上げ、法的根拠とともに開示を求めていく地道な作業が、適正な財産分与の実現を支えます。離婚や財産分与でお悩みの方は、まずはお気持ちの整理からでもご相談ください。