- 相続放棄
被相続人の死亡後,9年半が経過してからの相続放棄
相談前の状況
被相続人は,約9年半前に死亡していた。
被相続人の第1順位の相続人となる子のうちの一人(A)が跡取りとされており,これが被相続人の意思でもあった。そのため,Aも,ほかの相続人も,被相続人の意思を尊重して,被相続人の相続財産はAのみが相続することで合意していた。
相続人全員の意思は一つであり,A以外の相続人は,必要になればAから連絡があるだろうと思ってAに任せていたが,実際には何もされていなかった。遺産分割協議さえされていない。このように,被相続人の相続財産が約9年半もの間放置されていたところ,突然,金融機関から,各相続人に対して,被相続人Aの多額の借金が請求されるに至った(なお,当時,その金融機関に関する債権の消滅時効は10年であった。消滅時効が近づいたために請求がされたと思料される。したがって,消滅時効を援用することはできません。)。
A以外の相続人は,このような多額の借金が存在することを知らなかった。そこで,何とか対応できないかということで,法律相談にやってきた。
解決への流れ
相続放棄の熟慮期間は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,被相続人の死亡及び自己が相続人であることを知った時です。これを知った時から3か月が経過すると,熟慮期間が経過したと認められ,相続放棄の申述が認められることは,原則としてありません。今回の相続人は,配偶者及び第1順位の相続人であり,被相続人の死亡時にその死亡を認識していましたから,被相続人の死後3か月が熟慮期間となります。既に約9年半が経過していますから,相続放棄の申述が受理されることは原則としてありません。
しかし,相続放棄の動機となる財産や借金を知らなかった場合,知らなかったことに相当な理由が認められれば,これを知ってから3か月以内に相続放棄をすることで,相続放棄の申述が受理されることがあります。
本件では,被相続人の相続財産はAに任されており,それ以外の相続人は,被相続人が抱えていた多額の借金の存在を認識することができませんでした。金融期間からの通知により,初めて多額の借金の存在を知り,慌ててすぐに弁護士事務所に駆け込んできたのです。当職は,代理人としてこの点を家庭裁判所に説明(報告書を提出・裁判官との面談への対応)をして,無事に相続放棄の申述が受理されました。
竹本 真紀 弁護士からのコメント
相続は,家族関係があり,とても身近な関係の方たちとの間で発生します。身近な関係にあるから速やかに進めればよいのですが,なかなかそういかないことが多いのも事実です。身近な関係にあるから,特に問題はないだろうということで,そのまま時が経過してしまうこともあります。今回のケースもこの例です。問題がありそうな場合は,それぞれがきちんと調査をして,熟慮期間の間に相続放棄をすべきかどうか判断することができますが,借金もなく,特に問題もないだろうと思って放置していると,突然,借金の請求がやってきて,どうしていいかわからなくなることもあるのです。
今回は,借金の通知が来てすぐに弁護士事務所に来てくれたので,熟慮期間の起算点や期間内にあることの主張を準備することができました。依頼をうけた私も,慌てずに対応できてよかったです。皆さん,本当にほっとされていました。
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