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かぼちゃの馬車問題、弁護団がスルガ銀を刑事告発へ「書類改ざんして巨額融資した」
会見した弁護団

かぼちゃの馬車問題、弁護団がスルガ銀を刑事告発へ「書類改ざんして巨額融資した」

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズが経営破綻した問題で、オーナー(物件所有者)側を支援する弁護団が5月8日、東京都内でスルガ銀行との交渉に臨んだ。オーナーの債務減免について議論は平行線をたどった。ただ、偽造書類にもとづいて融資が実行されたとして、弁護団は14日にも刑事告発に踏み切る方針を明らかにした。

●めざすは早期解決「裁判で悠長にやっていくことはできない」

スルガ銀行は、シェアハウス建築の際に、一般会社員らの多くに1億円超の融資をした。融資の際に使われた預金通帳などのコピーの一部が改ざんされ、融資を受けやすいよう残高が数倍に水増しされたとも指摘されている。改ざんには役員が関与した疑いも浮上。金融庁は4月、スルガ銀行の融資体制を問題視して、立入検査に乗り出した。

弁護団によると、5月14日にも、スルガ銀行員や不動産販売業者について、預金通帳のコピーの改ざんに関わったとして、私文書偽造や変造の罪で刑事告発する。今後さらに証拠が集まった段階で、詐欺や背任などの罪で告発することも検討するという。

交渉後の会見で、紀藤正樹弁護士は「基本的に大規模な消費者問題で、すでに自殺者も出ていて、裁判で悠長にやっていくというのをこちらとしては第一方針には立てない。あちら(スルガ銀行側)は、裁判に持ち込んで、スルガを生き延びさせたいようだ」と話した。

裁判になって、高裁や最高裁まで争えば、5年程度の時間が経過してしまう場合もある。この間、多額の借金を背負い続けるオーナーたちの苦しみが解決しないことを懸念している。河合弘之弁護士は「(交渉を通じ)半年で決着をつけたいと思っている」と語った。

●スルガ銀行、焦げ付きリスクで利益予想220億円下振れ

一方、スルガ銀行は5月8日、この問題に絡んで貸倒引当金を積み増したと発表した。約700人のオーナーに対する融資総額は、1000億円前後ともみられており、オーナーから融資を回収できない場合に備えて積み増すことにした。

これに伴い、与信費用がかさむとして、業績を下方修正。5月15日に発表予定の2018年3月期決算について、連結最終利益は210億円(従来予想は430億円)と見込んだ。220億円下振れさせたことになる。

スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を置く、地方銀行のひとつ。日本銀行によるマイナス金利などで地銀の多くが収益源に困るなか、リスクが高い個人向けの融資を強化してきたことで高収益を実現。「地銀の雄」ともいわれてきたが、今回の問題による傷は大きい。

5月8日の交渉後、弁護団は、スルガ銀行が貸倒引当金を積み増すことについても疑問を投げかけた。債務を回収できるかどうかは、その人の資力によるが、その資力を示す預金通帳などのコピーの改ざんが複数確認されているためだ。

河合弁護士は「偽造されたものをもとに、引当金を試算するというのは馬鹿げた話だ」。スルガ銀行の決算をみる監査法人に対し、注意喚起のための申し入れを近く行うという。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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