不妊治療に関わる医療機関と患者をサポート「法の整備が不十分な分野だからこそ弁護士が必要」
法的観点で幅広いサポートが行えることが弁護士の魅力
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
高校時代に法律に興味を持ち始め、大学は法学部に進学しました。大学入学当初は法曹はいくつかの選択肢の1つだったのですが、法律を学んでいくにつれ、法律を使って困っている人の役に立ちたいという思いが強くなりました。
法曹三者の中で弁護士を選んだのは、弁護士は法的な観点で幅広いサポートが行えると考えたからです。犯罪などの被害に遭った方の精神的・経済的損害を回復するサポートもできますし、予防法務でトラブルを未然に防止することも可能です。裁判官や検察官と比べて業務内容の幅が広いことにも魅力を感じました。
ーー注力している分野を教えてください。
医療問題、離婚、交通事故に注力しています。中でも力を入れているのが、不妊治療に関する医療問題です。
不妊治療問題に取り組むようになったのは、不妊治療クリニックからご相談やご依頼を受けたことがきっかけです。それまで不妊治療に関する医療問題を扱うことはほとんどなかったのですが、依頼を受けて取り組んでみると、不妊治療は医療業界において比較的新しい分野であるため、他の分野に比べて裁判例がほとんど存在せず、法整備も十分に行われていないことがわかりました。
不妊治療は令和4年から保険が適用され、さまざまな面で不妊治療をサポートする助成に取り組む自治体が増えてくるなど今後ますます注目される分野です。その一方で、不妊治療問題分野に注力して扱う弁護士は少なく、法的観点から医療機関や患者の方々をサポートする体制は整っていないように感じます。
それならば自分が率先して不妊治療問題に関わる医療関係者や患者の支えになりたいと考え、この分野に注力するようになりました。 現在は、不妊治療分野に関するご相談、ご依頼を受けて、現場で起こる問題に対応しながら、同時に、顧問契約を結んでいる不妊治療クリニックの医師から医療について学んだり、不妊治療の知見を広めています。
ーー不妊治療に関してどのような相談が寄せられますか?
一般的な医療過誤と同様、治療内容や治療方針を巡って病院と患者が対立してしまうケースもあるのですが、特徴的なのは、凍結した胚(受精卵)や精子、卵子の取り扱いに関するトラブルです。
凍結胚や精子は目で直接見えるものではないため扱いが繊細で難しく、胚の培養や保管に関しても細心の注意が必要ですし、保管していた胚の紛失や破棄といったトラブルが怒ることもあります。また、凍結融解後に胚に異常(変性)が起こった場合、その責任は誰にあるのかといった責任追及問題に発展することもあります。
また、胚(受精卵)の権利に関する問題もあります。 以前ご依頼をお受けした案件に、不妊治療を受けていたご夫婦が別の病院への転院を希望し、元の病院に凍結胚の移送を願い出たところ断られてしまったという案件がありました。
交渉の末、最終的に凍結胚を返還してもらうことができたのですが、病院で保管されている凍結胚の権利が誰に属するのかは、直接的に法律で定められているわけでもなく、このようなトラブルは今後も起こりうると思います。
法律が整備されていないからこそ、病院と患者との間で交わす書類(同意書など)は非常に重要です。医療機関側から同意書の雛形作成やチェックなど、トラブルを未然に防ぐためのご相談やご依頼も受けています。
依頼者や相手方の気持ちを尊重することが最善の解決に繋がる
ーー仕事をする上で心掛けていることはありますか?
当然のことですが、依頼者さまにとって最善の解決を実現したいと常に考えています。同じような事件であっても、それぞれに思いや考えは異なります。型にはまった解決策ではなく、依頼者さま一人一人の意向に合わせた解決を実現するように心掛けています。
そのためには、じっくりお話をお聞きすることが大切です。「弁護士は敷居が高い」「弁護士は忙しいから時間をつくってくれない」というイメージを持たれている方が多いように感じます。そこで、「何か困ったことはありませんか?」「打ち合わせの必要はないですか?」など、こちらから積極的に連絡して、依頼者さまが相談しやすい環境を整えるようにしています。
また、弁護士が方針を決めるのではなく、最終的には依頼者さま自身に選択してもらうことが大事だと思っています。依頼者さまが最善の解決策を選択できるように、なるべく多くの選択肢を用意して、ご提案をすることが、弁護士の重要な務めだと考えます。
ーーどんな時に弁護士としてのやりがいを感じますか?
非常に多くの弁護士がいる中で、私の元に相談に来ていただけることも嬉しいですし、解決後に「先生に依頼してよかった」と言葉をかけていただくと、弁護士になって良かったと心から感じます。
事件解決後に別の問題で相談に来てくれる方や、もともとご依頼をしていただいた方からの紹介を受けて相談に来てくださる方がいると、自分の活動がしっかり役に立っているのだと感じられて励みになります。
ーーこれまで活動してきた中で印象的だったエピソードはありますか?
妻からのDVで悩んでいた男性の案件が印象に残っています。始めはDV被害に関する相談だったのですが、話を進める中で離婚を決意され、離婚協議の代理人として依頼を受けることになりました。
交渉はお相手が当初は離婚に同意しなかったため難航しました。それでも諦めることなく、依頼者と綿密な打ち合わせを重ね、粘り強く交渉を続けた結果、最終的に離婚を成立させることができました。
夫婦や家族のトラブルは精神的にも肉体的にも大きな負荷がかかります。それはご依頼者だけでなく、相手方にも言えることだと思います。ご依頼者の心情に配慮することは非常に重要ですが、相手方の考えや、意向を汲み取ることも、どのように進めていくかを考えるにあたっては大切なことです。
離婚問題に限らず全てのトラブルに通じることですが、法的な観点で考えると共に、ご依頼者の気持ちに配慮すること、相手方の考え方や意向を汲み取ることが、最善の解決に繋がると実感した案件でした。
依頼者の心が少しでも楽になるよう誠心誠意尽くしたい
ーー休日の過ごし方や趣味を教えてください。
今は、仕事に必要な知識を少しでも多くインプットしたいので、休日は顧問契約を結んでいる不妊治療クリニックの医師から医療の知識を学んだり、書籍を読み込んだり、関連する過去の医療系の裁判例を調べたりして過ごすことが多いです。
趣味は自宅で飼い猫と遊ぶことです。仕事の疲れを癒してもらっています。
ーー今後の展望をお聞かせください。
どなたからも頼っていただけるような弁護士になりたいと思っています。そのためにも、注力分野を中心に様々な案件に取り組み、経験を積んでいきたいと思っています。
不妊治療は今後さらに需要が高まることが予想されます。 法整備が進んでいない分野ではありますが、これまでに培ってきた経験や知識を活かし、一人でも多くの医療関係者や患者さまの力になり、結果としてより良い不妊治療が発展していくように法的な側面からサポートできるよう、ライフワークとして取り組んでいきたいと考えています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
法律トラブルは非常にデリケートな問題であるため、強い不安を抱えている方や、心が傷ついてしまっている方も多いかと思います。
弁護士への相談は敷居が高いと思われがちですが、少しでも心が楽になるよう誠心誠意尽くしますので、お気軽にご相談ください。