乗杉 純 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
積極的な理由から言うと、渉外弁護士は英語を活かせるからです。私は父の仕事の関係でニューヨークにいたこともあって、英語が得意でした。従ってそれを活かせる渉外弁護士の道を選びました。
消極的な理由は、私の父は銀行員だったのですが、その姿を見ていて自分がサラリーマンに合っていないと考えました。というのも、企業のような組織の中で生きていくのは大変だと感じたからです。
そこで、組織に属さない弁護士という職業に興味を持ちました。弁護士にも様々な種類がありますが、親戚に渉外弁護士がいたことから、そういった企業法務の分野に惹かれました。
学生時代
大学に入学した当初から、司法試験を目指していたので、司法試験用のサークルに入ったのですが、何か雰囲気が合わずに辞めてしまいました。その後、英語が得意ということもあり、英会話サークルのWESAに入りました。2年の時には、英語のディベートリーグであるTokyo Intercollegiate Debate League (TIDL)で準優勝を果たしました。その後、やはり司法試験を目指したいということでWESAを辞め、独学で法律の勉強に励みました。
受験勉強で工夫していたこと
私は完全に独学で勉強していたのですが、やはりそれよりも友人と議論し合いながら行った方が効果的だと思います。ただ私が独学で勉強していた中で、学生に勧められる勉強法としては、分からないことがあってもすぐ人に聞くのではなく、「なぜそうなるのか」ということを自分で必死に考えるということです。その考えるプロセスやメソッドは特に論文試験の時に活きてくると思います。
司法試験のために学んだ知識で実務に役立つこと
法律の考え方(リーガルマインド)だと思います。法律は改正されますし、知識はその都度調べれば身につきます。重要なことは考え方です。司法試験の際に勉強した、結論を得るにはどのようなプロセスを経るのか、あるいはそこにどのような原理が働いているのかというマインドは新たな法律にも応用できます。
アメリカのロースクールへの留学で養われた力
議論する力やリーガルマインドが強化されたと思います。アメリカは日本と違い、対話法で授業を進めていきます。つまり、学生と教授がディスカッションする方式です。この方法では、論理を自分で組み立て、常に相手を疑い、自分の主張を簡単には曲げないということが必要です。そのため、相手を説得しようとする論理的思考力や、ディスカッションするスキルが養われました。
印象に残っている案件(事件)
黒澤明監督の映画「乱」の国際共同製作契約に携わったことです。「乱」は日本とフランスの合作の映画で、私は黒澤監督側の弁護士として契約書を作成しました。当時は、こうした映画の国際共同製作契約は前例がなかったので、最先端な契約となりました。ただそれと同時に人間臭い交渉でもありました。
というのも、黒澤監督と相手方であるフランス人のプロデューサーとの間で様々な衝突が多発して、それを仲裁する必要があったからです。その意味では、非常に特殊でドラマチックな事件だったと思います。この難しい契約を成功できたのは、黒澤監督をはじめ、非常に気難しい人物をなだめながら、私自身が彼らに気に入られたことも1つの理由なのかもしれません。
今後の弁護士業界の動向
これだけ人数が増えると、弁護士は二極化していく可能性があります。一方では、4大事務所に入所し、日本の根幹を担うような案件を扱う弁護士。もう一方では、なかなか就職先が決まらず、仕事も少ないような弁護士です。このようにかなり差が出てくることが考えられます。
関心のある分野
関心のある分野というよりは、今ある案件を柔軟に解決しています。現在、自動車メーカーの仕事をしていますが、そこでは契約の問題もありますが、労働問題など多様な法的問題に対処する必要があります。つまり、こちらが仕事の分野を選ぶのではなく、来た仕事にその都度対応していくような形です。
弁護士に最も求められると思う力
内容によっても異なると思います。人間としての魅力、人間力が求められる場合もあるでしょうし、より緻密な学者的な能力が求められる場合もあると思います。そういった中で、自分がどんな仕事に向いているのかを判断できることが重要ではないでしょうか。