伊藤 和子 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学に入る際、小説家になりたかったこともあり文学部と法学部とで迷いましたが、女性の社会進出のためには資格が必要だと思い、法学部を選びました。
そして、大学在学中に『法とはなにか』の著者・渡辺洋三先生のゼミに参加し、読み、水俣病や人権に関する裁判で弁護士が果たす役割について目を開かされ、不合理な社会問題を正すことができる弁護士になろうと決めました。
印象に残っている事例
弁護士1年目から取り組み、今でも担当している名張ブドウ酒事件です。
この事件は、足利事件同様、自白を強要され、さらに誤った科学証拠が控訴審で出された結果、一審無罪の後、逆転死刑判決が言い渡された事案で、再審請求をしています。この事件で裁判所は自白に依拠し、「疑わしきは被告人の利益」の原則に著しく反する判断をし続けてきました。
そのことに愕然とし、無実の死刑囚である奥西勝さんを救い出すための弁護活動をすると同時に、日本の刑事司法の在り方を根本から変えるために活動をするようになりました。
また、2004年に起きたイラク邦人人質事件で人質となったNGOの人などの代理人をしたことです。国境を越えて、不当な戦争の犠牲になって困っている人を助けようとする人たちの姿を目の当たりにしたことは、私が2006年に、国境を越えて人権問題に取り組む日本発の国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」を設立するきっかけとなりました。
仕事の中で嬉しかったこと
自分の書面で釈放されるなど一つずつ解決できたことが嬉しいことです。また、一つひとつの事件や紛争で人権回復ができることは弁護士冥利につきます。
弁護士になって大変だと感じること
裁判官でないので、当然のことながら自分で判決を出すことができないことです。例えば、ずっと、無実の人を救うことができないのは辛いことです。
依頼者に対して気をつけていること
依頼者の話と望みをよく聞くこと、そして依頼者の利益を最大限計ることです。また、紛争で傷ついた人には、法的な解決と同時に、精神的な回復を手助けすることにも気を配っています。
休日の過ごし方
映画を見たり、公園に出かけたり、美術・音楽鑑賞などです。
関心のある分野
人権の分野です。日本では、女性や子どもの権利、そして、刑事冤罪をなくす活動に取り組んでいます。
また、日本の法律家は日本国内の人権問題に絞って活動をしがちですが、世界には貧困、紛争、独裁政治などのもとで、本当に深刻な人権侵害があり、社会的弱者が犠牲になっています。私は国境を越えて、最も苦しむ人たちの人権問題に取り組んでいきたいと思っています。
そうした仕組みが日本にはなかったので、米国留学から帰国した2006年に、日本から国際人権問題に取り組む国際人権NGOヒューマンライツ・ナウを仲間と一緒に設立して、現在事務局長として活動しています。
現在弁護士を中心に約700名の会員が、アジア地域、例えばカンボジアやインド、ビルマやフィリピン、そしてパレスチナなどの紛争地の人権侵害の問題に取り組んでいます。
弁護士としての信条・ポリシー
法的な弱者、そして、人生のなかで苦境にありながら、味方になってくれる人がいない人の立場に立った弁護をすることを信条としています。人権を否定する立場の弁護は受けません。
ヒューマンライツ・ナウでは、法律的な知識を生かして、国境を越えて世界の人権侵害に対する調査・政策提言などの活動をしていますが、そこでのポリシーは、最も弱い立場の人の権利を守る事、最も深刻な人権侵害に取り組むこと、そして、光のあてられていない人権侵害に光をあてて、解決を促進する役割を果たすことをモットーにしています。
ページを見ている方へのメッセージ
理不尽な理由で、権利を侵害されている人たちが多くいます。例えば女性であれば、いわれのない就職差別を受けたり、配偶者の暴力を受けて、自信を喪失することがあります。しかし、それは自分の責任ではない、そんな時には、是非泣き寝入りをしないで、法的な解決を目指し、弁護士を活用して欲しいと思います。