
40年以上の弁護士経験をもとに、依頼者の意向を丁寧に汲み取り解決に導く
「同じ事件はひとつとしてない」
ーー弁護士を目指した理由やきっかけを教えてください。
法学部に進学して周りの同級生が司法試験の勉強をしているのを見て、「自分もやってみようか」と軽い気持ちで勉強を始めたことがきっかけです。
それまで私は、学問というと歴史や文学といったアカデミックな、現実からは少し遠くにあるものというイメージを持っていたので、金銭の貸借や土地の境界問題など現実に生起する色々な問題を扱う、法律という実学の勉強に最初はとまどいました。しかし、もともと負けず嫌いな性格だったので、友人との議論に負けないように文献にあたり議論をする中で法律の勉強がおもしろくなり、少なからぬ挫折はありましたが、最終的に司法試験に合格することができました。
ーー弁護士としての仕事は、どんなところにやりがいを感じているのでしょうか。
弁護士の仕事は、法律を解釈したり議論をしたりすることが必ずしも中心になる訳ではなく、法律適用の前提になる事実関係をどう整理してどう主張を構成して行くかというところにむしろウェートが置かれます。
その意味で質の良い情報を如何に多く取得するかということが、重要な意味を持ちます。 弁護士の仕事は人間社会に生起するあらゆることがらに関係を持つとも言えます。 弁護士の仕事で大事なことは交渉力でもあります。人の心理や関係者の利害を考えながら、妥当な解決に向けて交渉を進める中に弁護士の仕事の醍醐味もあります。
商売は「あきない(商い・飽きない)」といいますが、弁護士の仕事も同じで「あきない」ですね。事案は常に新しい顔を持っていて、より良い解決に向けて努力しようという意欲を刺激してくれます。
誠実に丁寧に依頼者の利益を考える
ーー仕事をする上で心がけていることは何でしょうか。
当たり前のことですが、誠実に丁寧に依頼者の話を聞いて依頼者の真の利益を常に考えることです。
依頼者の利益が正義にかなうのかという視点も弁護士として忘れないようにしています。依頼者の利益を主張したときに、「常識的に考えて納得せざるを得ない」と、相手方にも思わせるような主張でなければなりません。
依頼者の意向と私の考えが合わないときには、依頼者に十分な説明をし、時には説得をすることもあります。
また、依頼者との信頼関係を築くことも大切にしています。依頼者に親身になって接することはもちろん、依頼者の興味関心や利害に目を配り、懸命に取り組む姿勢でいれば、自然と依頼者との信頼関係を築けると思い、日々取り組んでいます。
ーー弁護士として活動をされてきた中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
駆け出しのころに、事前に依頼会社から了解を得ていた条件を若干越えた内容で裁判での和解に応じてしまったことがありました。そのことの反省から、「依頼者の意向はどんな場合も慎重に確認する」という指針が経験から得られたものとして今も私の胸に刻まれています。
裁判官に「先生、このくらいの金額なら許容範囲でしょう」と和解を勧められた際につい応じてしまったのですが、裁判が終わった後、本当はもう一度期日を入れて裁判所の考えを依頼会社に伝えて了解を取る手続きを踏むべきだったなあと冷や汗をかいたことを今でも覚えています。結果的には依頼会社との事前の打ち合わせの範囲内だったということで、了解を得ることができ、大きな問題にならずに済みましたが、それ以来、どんな場合も依頼人の意向を慎重に確認するようにしています。
ーー若手の指導も積極的に行っているそうですね。
あまり細かい指導はしません。若い弁護士たちも司法試験に合格し、研修を受けてきています。また、プロとして中途半端な仕事はできないはずです。基本的に信頼して仕事を任せています。
ただ、書面の作り方については、プロとして細かく指導します。弁護士の仕事においては、論理的で要領を得た、分かりやすい文章表現が、あらゆる場面で求められるからです。書面の作成は、弁護士の業務の基本中の基本であり、かつ最も大切な業務だと思うので、厳しく指導しています。
物事を真剣に考える人ほど悩むもの。ぜひ相談を
ーープライベートについても伺います。休日はどのようにお過ごしですか。
ゴルフを楽しんでいて、週に1回はコースに出るようにしています。それから、ここ2〜3年は実家に作ったセカンドハウスの庭仕事を多くするようになりました。庭仕事は土を掘ったり、草を刈ったり、木を植えたりと意外によい運動になって筋肉が付きます。ゴルフでも飛距離が出るようになったんですよ(笑)
読書も好きです。電車に乗っている時などの隙間時間を活用して読むようにしています。山本周五郎が好きで、ほとんどの作品を読みました。最近は、井上靖の本も読んでいます。「夏草冬濤」「しろばんば」「額田女王」「蒼き狼」「天平の甍」 などは素晴らしい作品でした。吉村昭の小説もいいですね。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
この事務所をよい形で次の世代に継承したいと思っています。そのために、この事務所を少しでもよい状態に発展させられるよう、まだまだ私も仕事しなければと思います。
ーー法律トラブルを抱えて困っている方にメッセージをお願いします。
物事を真剣に考える人ほど悩んでしまうものです。まずは、人に相談することが大事です。中でも専門家に相談するのが確実だと思います。専門家には必要な知識があり、様々なケースに対応してきた経験もあります。あなたの悩みを解決するための選択肢を示してくれるでしょう。
相談する際、緊張で上手く話せないかもしれませんが、ありのままを話していただければ結構です。また、スムーズに自分の思いを伝えるために、メモに書いて頭の中を整理するのもよいかもしれません。まずは気軽に相談してみてください。