有田 知徳 弁護士 インタビュー
法曹界を目指したきっかけ
「世のため人のために立ちたいという気持ち」が強く、高校時代は医者になりたいと思っていました。しかし、理工系の能力不足から難しいと思いまして、法律家を考えました。
司法試験に合格、実務修習までは弁護士を考えていましたが、実務修習の体験から検事に進むことを決めました。裁判官に任官しなかったのは、自分の性格がアクテイブで、判断者よりプレイヤーが適していると思ったからです。
検察官から弁護士に転身
36年間の検事生活を経て、弁護士の登録をした訳ですが、立場は異なっても、基本的な部分はさほど変わらないと思っています。
法律は、民事事件も刑事事件も、基本的には人間の営み、人と人とのコンフリクト(紛争・衝突)を対象とするものと思います。コンフリクトが私人間に止まる場合は民事事件、国民の代表者が決めた刑罰法令(条例をも含みます)に違反する場合は刑事事件となります。
民事刑事を問わず、人にはいろいろな「欲」があり、それが行動に現れるので、社会の規範(道徳律、約束、取り決め、契約、条例、法律)という物差しでその調整をしていくのが法律家であり、その中でも、クライアント(依頼者)の視点でその利益をはかるのが弁護士の仕事であると思います。
クライアントの主張が,社会の規範をはみ出している時にはそのことを説得するのも仕事の大切な部分と思います。
検察官時代を含めて仕事で嬉しかったこと
事件の関係者から感謝されるなど仕事をしたという実感を得られることです。
事件関係者から、感謝の言葉や手紙を戴くことが結構ありました。担当した事件で受刑中の方、出所した方からもう二度と過ちを犯さないという手紙を戴くことは検事冥利に尽きますね。
また、夫婦間での背信的行為を妻が隠していたことが発端となった事件で、その事件の解決の経過の中で妻が深く謝罪して更正を誓い、夫が苦渋の決断の末にこれを受け入れて、事件が無事解決すると共に修復した夫婦から「検察官のおかげで本当の夫婦になれた。検察官が仲人です」と言われたことがあります。もう随分前のことですが今でも円満な夫婦として歳月を積み重ねておられることを願っています。
大変だと感じること
弁護士でも検察官でも、人から本当のことを聞き出すことだと思います。
弁護士は、クライアントからお金を貰う立場ですから、クライアントを相手に直接的に真実を追求するのは難しいので、言葉の端々から真実を聞き取るしかありません。
人間は弱い人ほど真実を語りたがりません。真実を語らないのは仕方がないことですが、真相は無理でもそれに近いところをベースにしてコンフリクトの調整をすることが、クライアントのためにも社会のためにも必要だろうと思います。
その意味で、弁護士も、検察官も地道な大変な仕事だと思っています。
休日の過ごし方
仕事から解放されることが一番です。それには、アウトドアで体を動かすこと、ハイキングもしますが、海・渓流を問わず魚釣りによく出かけます。
弁護士としての信条・ポリシー
よく話を聞いて、依頼者が何を心底求めているかを探り出し、弁護士としての意見を述べ、率直な意見を闘わせ、お互いが納得出来る合意をつくること。その合意を元に弁護活動を展開することが大切だと思っています。
自身のポリシーとしては事件の小大を問わず、どんな事件でも全力を尽くすことです!
依頼者に対して気をつけていること
自分が納得するような事件を受けたいと常に思っているので、反社会的勢力の方の事件はお断りします。依頼者のお話をじっくりちゃんとよく聞きます。聞くというよりは、聞き出します、と言った方が正しいですかね。
関心のある分野
検事時代のある時期に特別捜査部で会社犯罪や脱税事件等を担当していました。また検事時代の最後の10年間は組織の管理も経験させて貰いました。これらの経験を生かして事務所では企業法務、コンプライアンス、組織管理、危機管理を担当しております。また、安心・安全な地域社会の実現ということにも興味を持っています。
今後の弁護士業界の動向
専門性が顕著になってくると思います。もちろん、弁護士は市民の法律家でありますから、全ての法律問題について解決の方向性を示せる弁護士でなければなりませんが、これだけ種々の分野が細分化されて専門性が高まって来ていますので、弁護士にはその分野での専門的知識が要請されると思います。
現に、企業法務、渉外関係、知的所有権などの分野では専門化されていますが、その分野はますます拡張し、専門性が一段と強まると思います。これは社会の要請であると思います。
一つ気になることは、弁護士の数が年々増えて、希望しても勤務する弁護士事務所がない若手弁護士が出始めたということです。その増加する弁護士を適正に吸収できる社会的な仕組み、制度を開発・定着させていかなければ、全て訴訟で解決するといういわゆる悪い意味での訴訟社会になっていくのではないかという心配です。
行き過ぎた訴訟社会は、人々の日常生活を過渡に緊張させ、穏やかな人間関係を阻害することになりかねません。刑罰法令の適用にしても、過ちを犯した人を排除するだけが目的ではなく、社会に復帰することを目指した宥恕の社会にしていくことが重要だと思います。
先生の今後のビジョン
企業法務、コンプライアンス関係に力を入れようと思っています。あとは、何か社会のお役に立てればと思っています。