田中 宏 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
昔から周囲の人々に理屈っぽいと言われてきていたため、ぼんやりながらも志望していました。ただ、小学6年生の時に3億円事件が起こり、それが弁護士を志望する決め手になりました。
3億円事件ではある人が容疑者としてターゲットになったのですが、結果的にその人は何の関係もなく、ただむやみに疑われていただけだったのです。しかし当時の私の担任が「疑われる方が悪い」と発言し、それにものすごく腹をたてました。
当時、担任の先生と、クラスの全生徒との間で一種の持ち回り式の交換日記をしていたのですが、それについて激烈なことを書いていました(笑)。その先生とはその時に深く議論しませんでしたが、このことが弁護士を志望する最も根っこの部分だと言えます。
印象に残っている案件(事件)
ある民事事件の話ですが、依頼者のもつ漁船が借金の担保に取られてしまい、返済期限が迫り、漁船を失う瀬戸際になってしまいました。万事休すと思いましたが、土壇場で船を買って、借金を肩代わりしてくれる人が現れたので、現地に出向いて交渉を行いました。
ところが、この交渉が非常に大変で、まとまりそうになったところで違う話が出て壊れる、の繰り返し。ほぼまる一日交渉をしてようやく話がまとまりました。依頼者の人生を左右するような、重い交渉が成功に終わったので、本当にホッとしましたし、印象に残っています。
仕事の中で嬉しかったこと
依頼者の方に「ホッとしました」と言っていただいた時です。勿論敗訴になることもありましたが、そんなときでも依頼者の方が自分自身の中で一つの区切りがついて納得してくださる時が一番うれしいです。
弁護士になって大変だと感じること
請け負った以上やりきらねばならない、逃げられないということです。弁護士である以上、腹をくくって責任を持ってやらねばならない義務が生じます。さらに、我々の仕事は依頼者の人生に大きく関わることになります。人生を背負っていることを度々実感します。
法科大学院の教師として感じること
司法試験の合格者自体は我々が受験をやっていたころより増えていますが、自分達の時代より楽に合格できるようになったとは思えません。試験の制度が大きく異なるので、単純な比較はできず、戦いとして激烈なものであることに変わりはありません。受験生のキャラクターが昔と違うということもないですね。
ただ、最近は減ってしまいましたが、異業種の人が多いということは、法科大学院制度初期の特徴でした。そういった人たちは往々にして法律学習に戸惑いを感じているので、そのケアというものも心がけるようにしていました。
現在は、法科大学院の専任の仕事からは離れ、法学部での初学者教育に携わっていますが、法科大学院で経験したことを活かして指導に当たっています。
弁護士としての信条・ポリシー
依頼者と付かず離れずの関係を築くことですね。依頼者の方を考えることは非常に大切なことですが、一心同体になってはいけないと思います。依頼者の方に傾倒しすぎてしまうと、最終的に生き残るための妥協案を執りづらくなってしまい、依頼者と一緒に沈没する危険性もあるのです。
依頼者に対して気をつけていること
お互いによく理解することです。時に厳しいことを言ったり、わざと煙に巻いたりすることで、依頼者が自ら考える姿勢を作るように心がけています。依頼者に考えてもらうことも必要なことなので、そのような行動を理解してもらうように気を配っています。また、それと同時にこちらが理解を深めるために依頼者の方からも何でも言ってもらうようにしています。
関心のある分野
法科大学院で民法をずっと教えてきたこともあって、契約や担保といった本質的部分に問題がある事件の相談を受けることが多いです。また、中規模の株式会社の顧問弁護士として、会社の法務部門の全般的サポートをやっているため、会社の仕事をよく理解してを契約に落とし込んでいくことが、難しくもあり、また面白くもあります。
今後の弁護士業界の動向
一度法律事務所に徒弟として入って後に独立という既存の体制は変わらざるを得ないでしょう。これからの弁護士は所属する場所がいろいろと変わっていくこともあるはずです。また、仕事スタイルも紛争解決事務が中心でしたが、予防法務など様々なものに形を変えていくでしょう。
今後のビジョン
特殊な分野をやってきた弁護士というわけでもないですから、今まで培ってきたものを磨いていきたいと思います。もっと質の高いサービスを提供していきたいと思います。