25年以上にわたり医療過誤事件に注力 経験と知識、医師とのネットワークを駆使して難事件を解決
長年の経験、医学知識、協力医からの評価 全てが事件解決に結びつく
ーー注力分野を教えてください。
患者側の医療過誤事件に注力しています。
もともと理系科目全般が得意で、高校時代は医学部に進学することも考えていました。医学に対する興味から取り組んでいることが1つの理由です。
もう1つは、自分自身の経験です。父親が病弱だったのですが、担当医が私たち家族の訴えをきちんと聞いてくれず、非常に残念な思いをしたことがありました。父親が受ける治療について「本当にそれでいいのか」と疑問に思いました。当時の気持ちは今も持ち続けていて、この分野を一生懸命手がける動機になっています。
ーー医療過誤事件を手がけるうえでの先生の強みは何でしょうか。
数々の事件を解決してきた豊富な経験と医学の基本的な知識があること、さらに協力医とのネットワークを駆使して充実した証拠収集をおこない、医学的根拠に基づく主張立証ができることです。
これまで25年以上にわたって患者側の医療過誤事件に取り組んできました。
その間もちろん、医学の基本書や論文を読み込み、医師が主催する弁護士向けの医学講座なども積極的に受講し基礎知識を習得してきました。また、臨床経験豊かな開業医や病院勤務の専門医、時にはゴッドハンドと称される著名な方など数多くの医師の方たちにお会いし、事件に関連してレクチャーを受けてきました。そうした経験に加えて私自身医学に強い関心があるので、各事件を担当する際にご相談をお願いする専門医の方たちと対等に議論ができます。これは、他の弁護士にない大きなアドバンテージで、医学的知識や経験がない弁護士にはできるものではありません。このため、様々な協力医に評価・信頼してもらえているのだと思います。
また、協力医とのネットワークがあることは、患者側の医療事件を手がけるうえでは非常に重要です。私は長年の経験のなかで協力医たちとの信頼関係を築いてきました。「こういうケースならこの医師」と適切に選定できますし、協力医がなかなか見つからないような難しいケースでも、トップクラスの医師に直接手紙を送って面談し、協力を依頼してきた実績があります。
訴訟では、訴えを起こした側が主張も立証も裏付けも全ておこなわなければなりません。患者側の弁護士として裁判を起こし、病院側との戦いに勝利するためには、医療に関して相当の素養と経験とノウハウが必要です。
医療過誤事件に取り組む上で必要なそれらの要素を磨き続けてきたからこそ、他の事務所では取り扱えない、難易度が高い事件を解決に導いて来られたのだと自負しています。
証拠を徹底的に検証し、謎を解く
ーー医療過誤事件を手がけるうえで心がけていることを教えてください。
根拠のある仕事をすることです。
医療過誤事件は、実は推理小説と通じるところがあります。推理小説において、名探偵は、ある事実や根拠をもとに疑問や不可解な点を1つ1つ解明しながら、犯人を特定していきます。
私が事件に取り組むときにも、「この悪い結果はなぜ生じたのだろう」「この医師はなぜこういう過ちを起こしたのだろう」「本来はどういう処置をすべきだったのか。その処置をしていればこの患者を助けられたのか」といったことを、記録や協力医の意見、論文などから検証していきます。1つの事件を受けるとだいたい50〜60本は論文を読みますし、海外の論文を取り寄せることもあります。
何かを主張するのであれば、常に、事実を裏付ける根拠となる論文や記録を添えることを徹底しています。よい結果を得るためには不可欠なことです。
私が以前手がけた、妊婦が羊水塞栓症(編注:出産時に羊水が母体の血液の中に流れ込む病気)を発症して死亡し、遺族が病院と医師らに対して損害賠償を求めた事案では、論文が決定打となって高裁で逆転勝訴判決を獲得できました。
それまで羊水塞栓症の事案は、我々の業界では勝つことが出来ない医療事件とされていました。
その理由は、羊水塞栓症の治療をした場合の救命可能性でした。もともと羊水塞栓症は母体死亡率が高いとされていて、日本の産婦人科医学界では一般的に死亡率は8割以上とされ、論文などにもそう書かれていました。死亡率がそのくらいだと、仮に適切な治療をしていても結局は助けられない可能性の方が高いので、死の結果は防げなかっただろうから、不適切な医療でも損害賠償に値しない、とされてしまうのです(これを結果に対する因果関係を欠くと言います)。
ただ、私としては本当に死亡率が8割もあるのかと疑わしく思い、様々な論文や文献を調べてみたんです。その結果、死亡率8割という数字の大元になった論文には根拠がな示されていないこと、そして、海外の権威ある医学雑誌(LANCET)に載った英語論文でも死亡率が2割程度とされていることや、日本国内の近年の調査では1〜2割に過ぎないことを突き止め、主張しましたが、残念ながら一審では敗訴判決を受けました。
そこで、控訴審ではさらに調査を深め、LANCET論文で引用されていたカリフォルニア州で全数を調査した論文も提出し、また、このケースが救命困難なタイプの症例でなかったことについて徹底的に医学的に詰めた主張をしました。そして、裁判所に「羊水塞栓症の事案でも適切な治療をすれば救命が可能」ということを理解してもらえたのです。
結果、東京高裁は、適切に治療すれば救命できたという判断を下し、医療機関側に約7490万円の支払いを命じる逆転勝訴判決が下されました。被告側は最高裁に上告しましたが、最高裁も被告側の上告を棄却し、この東京高裁勝訴判決は確定しています。
羊水塞栓症のケースで勝訴判決を獲得したのは日本で私が初めてでした。弁護士として、自分で言うのもなんですが、いろいろ成し遂げてきているなと思います。
ーーどんなときにやりがいを感じますか。
謎が解けた瞬間です。医療事件は必ずどこかに答えがあります。その医師がなぜ過誤を起こしたのか検証するなかで、「検査のこの結果を見落としていたから処置を誤ったんだ」「異常を見逃した理由はこれだったのか」ということが見えてくるんです。
事実に基づく発見によって謎が解け、点と点がつながり線になった瞬間のおもしろさ。医療過誤事件を手がける醍醐味だと思います。
ーー忙しい日々のなかでの息抜き方法は?
趣味が3年おきくらいに変わるのですが、ここ数年ハマっているのがバイクです。大型バイクに乗って、太陽を見ながら海岸沿いをソロツーリングしています。心からリフレッシュできますね。
「今困っている人を、なんとかして助けたい」
ーー今後の展望をお聞かせください。
私自身は引き続き、医療過誤事件に特化して取り組んでいくつもりです。事務所には私のほかに女性弁護士が2人在籍しているので、離婚や債務整理などの一般的な民事事件もバランスよく取り扱いたいと考えています。
最近は少し取扱い件数が減っていますが、交通事故事件にも力を入れたいです。過失割合で賠償額が大きく変わるケースや、重い後遺障害を負っているのに適切な等級認定が受けられず泣き寝入りしているケースなど、私たちが手がけるからこそ勝てる・いい結果が得られる事案を積極的に手がけていきたいと思います。
ーー最後に、トラブルを抱えて悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
私の事務所ではとにかく、「この方にとって、どうすれば最善の解決になるのか」ということを追求しています。
裁判や法的な手続きだけにとどまらず、様々な方法を検討し、「どうすれば、依頼者をこの状況から立ち直らせることができるか」「救いの手を差し伸べられるか」という観点で解決方法を探っていきます。
たとえば、破産事件。他の法律事務所では、破産の手続きをすれば弁護士の仕事は終わりというところが多いと思います。ですが私の事務所では、破産後の生活再建までサポートします。普通の生活が送れるようになってこそ、本当の意味での解決ができると考えているからです。
依頼者がなぜ破産しなければならないところまで追い込まれたのか、根本的な原因を探り、破産の原因が浪費にあるならレシートを全部持ってきてもらって、何に無駄なお金を使っているのかを一緒に見つめ直します。そうして1年くらいかけて指導して、生活を立て直していきます。
今困っている人を、とにかく、なんとかして助けてあげたい。そういう気持ちで全ての事案に取り組んでいます。法的な救済方法はもちろん、それ以外のやり方も含めて最善の解決策を一緒に探していきましょう。お気軽にご相談ください。