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「義援金が金融機関に差し押さえられてしまう可能性も」熊本地震・慶大で緊急セミナー
緊急セミナーの模様

「義援金が金融機関に差し押さえられてしまう可能性も」熊本地震・慶大で緊急セミナー

熊本地震が発生して2週間あまり。現地で何が求められているのか、どんな支援が必要なのか、今も議論が続いている。慶應義塾大学SFC研究所の防災情報社会デザインコンソーシアムは4月26日、東京・三田キャンパスで緊急セミナー「熊本地震対応 今なにをすべきか」を開催した。地震学者の大木聖子・慶大准教授(環境情報学部)や「災害復興法学」を提唱する岡本正弁護士ほか、さまざまな分野の専門家が登壇し、支援や防災のあり方について語った。

●「ボランティアに行く人で、自宅の家具固定している人どれほどいるのか」

大木准教授は「活断層は繰り返し地震を起こす。すでにわかっている他の活断層でも、熊本と同じことが起こりうる」と熊本の地震が例外ではないことを指摘し、日ごろからの地震対策の重要性を訴えた。

「熊本の地震は発生確率は1%前後だったが、それでも起こった。日本のどこに住んでいても、そのような状況だ。地震というのは、他の自然災害と違って、対策を取れば生き残ることができる。全国から多くの人が、熊本にボランティアに行っていると思うが、その中に自宅の家具を固定している人はどのくらいいるのか。

どこかで(地震の)被害があると、『3歩後退した。みんなでもとにもどろう』と復興に力を注ぐが、そもそも後退するような事態を起こさないよう備えることが重要だ。今回の地震を機に、自分で対策をとることの重要性が広まってほしい」

●「若者だからこそできる支援がある」

学生が中心となって熊本、大分への支援を行うコミュニティ「Youth Action for Kumamoto」を立ち上げた慶大商学部3年の塚田耀太さんは、「若者だからこそできる支援がある」と訴えた。

塚田さんは、熊本地震発生後、すぐフェイスブック上に「Youth Action for Kumamoto」の公開グループを設置し、被災地で必要とされる情報提供を呼びかけた。寄せられた情報をもとに、避難所や営業しているスーパー、ガソリンスタンドなどの位置を示したGoogleマイマップを公開した。このマップは、200万回以上閲覧され、グーグルが4月17日から提供している「熊本地震リソースマップ」の元になった。

「学生でも災害支援としてできることはある。強みの一つはデジタルネイティブ世代だということ。僕らはグーグル、ツイッター、フェイスブックを普段からガンガン使っている。こうしたツールを有効活用すれば、さまざまな情報を集約することができる。

もう一つは、社会人とは違った時間の使い方ができるということ。ゴールデンウィークは(社会人の人たちも)ボランティアに行くだろうが、学生はその後の平日も動ける人がいるので、ゴールデンウィークのあとも、人材を派遣していけたらと考えている」

●半壊住宅は対象にならない

災害時の法学と政策学を融合した「災害復興法学」を提唱する岡本正弁護士は、東日本大震災時、4万件の法律相談に接した経験をふまえ、被災者の生活再建のために必要な法制度、復興政策ついて「早急に対応する必要がある」と訴えた。

「被災者生活再建支援金は、家屋が全壊した場合300万円が支給される。結構な金額だが、生活再建にまではいたらない。仮設住宅から出ることができない」と支給金額を見直す議論が必要だと指摘。また、「全壊と大規模半壊は対象になるが、半壊住宅は対象にならない。義援金はもらえても、国の支援は受けられない」と支給対象の拡大を訴えた。

また、岡本弁護士は、現状では、被災者に支給される義援金が、金融機関の差し押さえの対象になってしまうことにも懸念を示した。


「現状では、義援金が(被災者の)口座に入金された瞬間に、(ローンなどの債務返済として)差し押さえが可能だ。東日本大震災では、超党派の議員立法で、差押え禁止法案が作られた。熊本でも、こうした法案を早急に成立させる必要がある」

(弁護士ドットコムニュース)

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