- 遺産分割
【遺産分割・寄与分】父の遺産分割で寄与分が認められ、法定相続分より多くの遺産を受け取ることができました。
相談前の状況
私は4人兄弟の長男で、長女である姉、二女である妹、次男である弟がいます。
父は母を亡くしてから一人暮らしをしていたのですが、足が悪く、次第に認知症のような症状も出始めたため、父をひとりで生活させるのが心配になり、兄弟で話をし、私が父を引き取ることとなったのです。
私が父を引き取ることとなった際、他の兄弟は父の財産は、将来、私がもらえばいいと言ってくれていましたので、私もそのつもりでいました。
父を引き取ってからも父の認知症は重くなり、介護認定を受け、デイサービスやショートステイも利用しましたが、基本的には自宅で、妻が中心となって介護をしていました。
父を引き取ってから数年の後、父が他界しました。
父の四十九日の日、他の兄弟から父の遺産の話が出たのですが、私は、引き取る際に他の兄弟が言ってくれていたように、私が父の遺産を受け取るものと思っていました。
ところが、他の兄弟たちは一様に法定相続分どおりの遺産がほしいと言い出したのです。
父は元々それほどの財産を持っていたわけではなく、私も父の遺産に執着があったわけではありません。
しかしながら、私が父を引き取る際、兄弟たちは、父の財産は私が取得すればいいと言っていたにもかかわらず、手の平を返したように遺産がほしいと言ってきたことに腹が立ちました。
何よりも、認知症が重症化した父の介護は大変なもので、その介護を一生懸命してくれた妻に労いと感謝の意を込めて、父の遺産を取得したときには妻のために使いたいと考えていたので、妻に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
そこで、せめて妻の努力に報いなければと思い、先生に相談することとしたのです。
解決への流れ
先生によれば、私たち家族が父のためにしてきた介護は、寄与行為に当たりうるものであり、寄与分が認められる可能性があるとのことでした。
そこで、役所にお願いして要介護度の認定結果を取り寄せ、同時に、父がお世話になっていた施設にもデイケアやショートステイの利用状況に関する資料を出してもらいました。
その資料を基に、先生に寄与分として認められうる金額を算定していただき、これを基に法定相続人である他の兄弟姉妹に対し、遺産の分割方法について、こちらの希望を文書で伝えてもらいました。
結局、寄与分をいくらにするかという部分で、合意に至ることができなかったため、遺産分割と寄与分を定める処分の調停を提起してもらい、結果、調停委員会では、こちらが主張した金額とほぼ同額の寄与分があることを前提に調停を進めてくれました。
結果として、父の生前中に他の兄弟姉妹がしてくれていた、遺産のすべてを私が取得するという約束は果たされることはありませんでしたが、遺産総額からすれば、それなりに大きい額の寄与分があることを前提とした調停を成立させることができました。
宮原 護 弁護士からのコメント
ご依頼いただきありがとうございます。
令和元年の民法改正により、法定相続人でない親族も「特別寄与料」という寄与に応じた額の請求ができるようになりました。
ご依頼があったのは令和元年以前のことで、民法改正前には、条文上は法定相続人による寄与行為でない場合には、寄与分が認められないという立て付けになっていました。
しかし、法定相続人である依頼者の奥様を介護の「(履行)補助者」、すなわち、依頼者の介護を奥様が手助けしていたと捉えることで、奥様がしていた介護を含めて依頼者の寄与分だと認定してもらえる可能性は十分にありました。
介護による寄与分が認められるには、それなりのハードルがあり、単に同居して食事を作っていたという程度では寄与分は認められず、介護の場合であれば、被介護者の要介護度2程度が一応の目安と言われています。
その意味では、それなりの介護を必要とされる状態でないと寄与行為と認められないということがあります。
今回の場合、お父様の認知症は次第に悪化し、かなり重度の認知症になってしまわれたことから、実際の介護は相当過酷なものであったことは想像に難くありません。
そのため、調停委員会が相当額の寄与分が認められるであろうという評議結果を前提に調停を進めてもらえたことは、介護の中心を担われた奥様のためにも本当に良かったと思います。
なお、法定相続人間で被相続人の介護を引き受ける代わりに、引き受ける者が遺産を単独で取得するとの話や約束がされることは時々あります。
実際、被相続人が亡くなった後、その約束を前提に遺産分割協議がなされることの方が多いのかもしれません。
しかし、法定相続人のうち、ひとりでも約束を守らない人がいる場合、この約束を前提に遺産分割協をすることは不可能となってしまいます。
法定相続人間の約束が果たされるかどうかは、各法定相続人の性格や経済状況等の各法定相続人を取り巻く環境によっても変わる可能性があります。
約束が果たされなかった場合、経済的な損失を被ることがあるのはもちろんですが、何より、期待や信頼が裏切られることで人間関係がズタズタに引き裂かれることになりかねません。
被相続人の生前中に遺産について法定相続人間で何らかの約束をする場合、被相続人の立場の方が遺産を誰にどれだけ遺したいとある程度決めておられる場合など、それをかなえる方法はありますが、知識なく備えることは難しいものです。
ですから、このような場合には、是非とも法律家の知識を使っていただければと思います。
- 営業時間
- 08:30 19:00