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「外国人技能実習制度」見直し法案、「構造的問題が放置されている」日弁連が批判
日弁連・人権擁護委員会外国人労働者受入れ問題PT事務局長をつとめる指宿昭一弁護士

「外国人技能実習制度」見直し法案、「構造的問題が放置されている」日弁連が批判

外国人技能実習制度の問題点などについて考える集会(主催:日本弁護士連合会)が4月25日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれ、現在国会で審議されている外国人技能実習制度の見直し法案について、弁護士たちが「構造的な問題が放置されている」などと強く批判した。

●制度の目的と実態がかけ離れている

外国人技能実習制度は、日本の技能を学んで、そのノウハウを母国で活かしてもらうことを目的に、外国人を受け入れるというもの。建設や農業、漁業などの職種が対象になっており、全国に約19万人の実習生がいるという。ただし、労働環境が劣悪だという批判が起きている。

現在審議されている見直し法案は、以下のように現状の改善を図ろうとしている。

(1)実習期間を現在の3年から最長5年へ延長する、(2)管理団体の許可制・実習実施機関の届出制を導入する、(3)監督・保護機関として、外国人技能実習機構を設立すること、などだ。また、実施管理者が、暴行・脅迫・監禁などによって、実習生の意思に反して技能実習を強制した場合の刑事罰も盛り込まれている。

これに対し、日弁連・人権擁護委員会外国人労働者受入れ問題PT事務局長をつとめる指宿昭一弁護士は集会で、「構造的な問題点を放置したままで、制度の存続、拡大は容認できない」と強く批判した。

日弁連が問題にしているのは、技能実習という制度の目的と実態が完全にかけ離れていることだという。実習生には職場移転の自由が認められず、対等な労使関係の構築も難しいとして、指宿弁護士は「実際は、労働力を確保するための制度であることは、誰の目にも明らかだ」と指摘した。

●「職場移転の自由」が制限されている

この集会には、実習生として来日した中国人女性(40代)も登壇して、通訳を介しながら、かつて体験した過酷な労働環境を語った。

女性は2012年に実習生として来日し、岐阜県内の縫製工場で働きはじめた。だが、来日1年目の月収は5万円、2年目は6万5000円、3年目も7万円程度だったという。休みもほとんどとらせてもらえず、1年目は年間8日、2年目は年間1日、3年目は労働組合が交渉するまで休みがなかったそうだ。

もちろん、このような労働条件は違法だ。しかし、女性が労働条件の改善や残業代の支払いを訴えても受け入れられなかった。また、中国から送り出した機関との間で違約金20万元(約340万円)の契約をさせられていたため、故郷に逃げ帰ることもできなかった。技能実習制度では、違約金は禁止されているが、女性には知らされていなかった。

女性は「ずっと前から技能実習生の問題がある。なんで、日本政府は解決できないのか」と訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

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