畑谷 嘉宏 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
貧しい人、弱い立場の人の権利を守り、生活の向上に貢献できるからです。社会貢献には色々なかたちがあると思いますが、直接困っている人の役に立ち、助けられるのが弁護士の魅力です。
仕事で嬉しかったこと
やはり依頼者の問題が解決した時が嬉しいです。例えば、製鉄所で仕事中心筋梗塞により亡くなった方がいました。現場の事故が原因で死亡したという訳ではありませんから、労災申請がされていませんでした。
しかし、それでは残された彼の家族は路頭に迷ってしまいますし、彼の激務と病気が無関係だとは考えられませんでした。そこで詳細に調べて証拠を用意し、とうとう労災認定に漕ぎ着けた件がありました。
こうしたケースは、生活を建て直したもしくは守れたと思えるので特に達成感がありましたね。
大変だと感じること
依頼者との信頼関係を築くことはとても大切であり、同時に難しいことです。弁護士は依頼を受けた時、闇雲には動かず、最善の終着点までの大まかな道筋を描いて依頼者の納得を得ながら解決に向けて進んでいきます。
その解決のかたちは勿論なるべく依頼者の希望に沿うように努めますが、証拠があまりに不十分だったり言い分が身勝手だったりする場合は、必ずしも依頼者の希望に適うようにはいきません。それを依頼者に納得して理解してもらうことが大変だったりします。特に近年はそう感じる事が増えましたね。
仕事をする上で意識していること
第一には、依頼者の話をよく聞くということです。そして何を解決して欲しいかということを正確に理解することです。その上でその訴えが正義に合致するかどうか、少なくとも違法もしくは非人道的でないということを判断します。
また、刑事事件では一刻も早く身柄を解放してあげることです。酔っぱらった末の器物損壊など割に小さな罪でも、逮捕されると通常合計12日程身柄を拘束されることになります。しかしそれだけの日数職場を休んでしまうと、大抵の場合は職を失うことになってしまいます。
問題は解決したけれど、職を失って明日から食べるあてがないということでは救いがありません。ですからなるべく早く3~5日で解放してあげられるように努めています。
関心のある分野
今注目しているのは任意後見からの成年後見です。それは、意思能力のある段階の依頼者の意思を支えている生活環境が、意思能力がなくなりつつある時、あるいは意思能力がなくなった時まで保ち続けることが困難だからです。制度の問題というより運用の問題だと思いますが、本当に依頼者の意思を実現するのは難しいということを感じています。
しかし、扱いたいという意味ではそれに限らず、特定の分野と言うより、普通の弁護士ならやりたがらないような前例のない難しい案件や、勝ち目のうすい裁判などがありますね。
また、弁護士は、重大な罪を犯した被告をどうして庇うのだと責められたりしますが、やみくもに無罪を主張したり、無理矢理罪を軽くしようとするのでは決してありません。罪を認める場合には罪を償う為にも、被告人の話を聞いてやる人が必要なのです。そしてそこから引き出される動機の中にこそ、立ち直るための契機が必ずある筈なのです。被告人が更生するのを助けることは、間接的に社会のためにもなります。
どんな案件でも正義に適うことであれば、誰かがコミットすることが大切だと思います。
今後の弁護士業界の動向
弁護士にとって状況はとても厳しくなっていくことは確実だと思います。法曹の中で弁護士だけが増えていっていますから。その増加に見合うだけの、新しい分野の事件が増える見通しが不明確です。
今後家事事件は増えると思いますが、多くの報酬が期待できない分野ですから弁護士が苦労するに事は変わらないでしょう。また潜在する労働事件は多く、本当は増えて然るべきだと思います。日本人の泣き寝入り気質や非正規就業の多さをなどの問題をのり越えていかなければならないという課題があります。
職域を拡大して行く事が必要になると思います。例えば刑事事件を捜査するとき、沢山の警察官が関わりますが、彼らの殆どが法曹資格を持っていないのが現状です。検察官の中にも法曹資格を持たない副検事が多数います。刑事司法の分野でもっと多数の法曹資格者を採用していく必要があります。
さらに、今や日本においても弁護士から裁判官や検察官を選出するアメリカ型の法曹一元の方向に進めていく必要があると思います。