会社員を経験したからこそ理解できることがある〜依頼者と信頼関係を築き、問題解決に挑む
自動車開発者から弁護士への転身
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
弁護士になる前は、自動車メーカーで新車の開発に携わっていました。「人が死なない安全性の高い車」をつくることを目標にしていましたが、理想と現実の間には大きなギャップがあることに気づかされました。
安全性を追求することと、売れる車をつくることは必ずしも一致しません。企業が利益を追求するのは当然のことであり、市場が求めていないものに投資することはありません。技術者としてどれだけ理想を追い求めても、会社員である以上は企業の方針に従わなければならないという現実に直面しました。この葛藤に悩んだ末、転職を決意しました。
人の命を守る車をつくれないのであれば、困っている人を救える仕事をしようと考えました。理系大学の出身でしたが、医者を目指すには年齢的に困難だったため、弁護士を目指すことに決めたのです。
ーー法律の勉強で苦労されたことはありますか。
ロースクールに入学してから最初の1年は本当に大変でした。六法が何かもわからない状態で、授業についていくのがやっとでした。それでも、周りの人に支えられながら勉強を続けて、司法試験に合格することができました。
会社を辞めて弁護士を目指すと決めたとき、周囲の人たちからは反対や批判を受けました。しかし、私は自分ならできると信じていました。強い意思さえあれば、弁護士になり、困っている人を助けるという目標を必ず実現できると信じていたのです。
ーー現在注力している分野と注力している理由を教えてください。
刑事事件、家事事件、交通事故に注力しています。
刑事事件では、逮捕された人が不当な扱いを受けることがあります。たとえば、勾留というのは、被疑者・被告人を逮捕後も引き続き拘束するための手続きです。勾留は、罪を犯したと疑うことができる十分な理由があり、かつ、「特定の住所がない」「証拠を隠滅する可能性がある」「逃亡する可能性がある」という条件のいずれかに当てはまる場合に認められます。
ところが実際は、条件に当てはまらない人でも勾留される場合があり、私は常々、そのような現状に疑問を感じていました。最も基本的な人権が制約されているこの分野で、弁護士としての役割を果たしたいと考え、注力するようになりました。
また、刑事事件では尋問や証人の確保など、人間同士の対話や交渉が重要であり、書面だけで終わらない点に、強くやりがいを感じます。
相続や離婚などの家事事件は、以前勤めていた法律事務所で多くの案件を扱い、経験が活かせることから注力しています。また、家事事件は生活に直接影響を与える重要な問題です。依頼者が平和な日常を取り戻せるよう、弁護士として案件解決に取り組むことに意義を感じます。
交通事故に関しては、自動車メーカーに勤務していた経験が最大限に活かせる分野であることから注力しています。法律の知識に加えて自動車の知識を活かすことで、より効果的なサポートを提供できると考えています。
ーー交通事故案件で活かせる自動車の知識とは、具体的にどのようなことですか。
修理報告書を専門的な視点から読めることと、自動車の構造に関する知識です。
例えば、自動車のバンパーには、衝撃を受けて変形しても元の形に復元するものがあります。そのため、バンパーに変形が見られないからといって、衝撃を受けていないとは言えないのです。例えばですが、バンパーの裏側の車体部分に取り付けられた、衝撃吸収用のリーンホースメントという部品があります。衝突すると、このリーンホースメント等が変形します。バンパーを外して中の車体をきちんと見ないと、どれくらいの衝撃であったのか分からないのです。このような知識が、交通事故案件で役立っています。
「ありがとう」と言ってもらえるように全力を尽くす
ーー企業に勤めていた経験が弁護士の活動に活かされていることはありますか。
ひとつはコミュニケーション能力です。会社勤めをしていると、社内の人間関係や取引先との付き合いなど、さまざまな場面でコミュニケーションが必要とされます。この経験は、依頼者や関係者とのコミュニケーションにも大いに役立っています。
もうひとつは、一般的な会社員の感覚や価値観を理解していることです。弁護士費用は決して安くはありません。一般的な会社員がどれくらいの仕事をして、どれくらいの収入を得ているかを知っているからこそ、依頼者が弁護士費用を負担する重みを理解し、一件一件の依頼に対して真摯に向き合わなければならないと感じます。
ーー弁護士として活動する上で心がけていることを教えてください。
信頼関係が最も重要だと考えています。依頼者が納得する解決を目指すためには、まず信頼関係が築かれていなければなりません。そのためには、依頼者の話をしっかりと聞き、何を求めているのかを正確に理解することが大切です。
単にお金を多く取るとか、刑を軽くするという安易な結論に導くのではなく、依頼者が私に対して何を期待しているのかを理解し、その期待に応えられるように尽力しています。
ーーこれまでの弁護士活動で印象に残っているエピソードを教えてください。
無罪を目指して高裁まで争った刑事事件があります。見通しは非常に厳しいものでしたが、できることはすべてやろうと、昼夜を問わず弁護活動に励みました。
結果として依頼者の無罪を勝ち取ることはできず、有罪判決が下されました。しかし、事件が終わった後に依頼者から「先生に担当してもらって良かった。ありがとうございます」という感謝の言葉を頂きました。
この経験を通じて、仮に依頼者の望む結果が得られなかったとしても、「ありがとう」と言ってもらえるように全力を尽くすことの重要性を改めて感じました。
また、離婚案件で私の依頼者の相手方から、後日、別の案件の依頼を受けたことがあります。その方は、私の働きぶりを見て依頼したいと思ってくれたそうです。
弁護士は結果が求められる職業ですが、結果に至るまでの過程も評価してもらえることは非常に嬉しく、励みになります。
新たな技術や法改正に適応し、最適なサポートを提供する
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
勤務弁護士時代は休日返上で働いていましたが、独立してからは自己のスケジュールを管理し、なるべく休息を取るようにしています。自分自身に余裕がなければ、依頼者のために十分なパフォーマンスが発揮できないと感じたんです。いまは以前よりも余裕を持って仕事に臨めています。
アウトドアが好きなので、休みの日にはキャンプや釣りをしてリフレッシュしています。また、最近は飼い猫に癒やされています。
犬を飼う予定で引っ越した住宅の屋根裏に猫が住み着いており、その後、猫が子猫を産みました。一時は10匹の猫が屋根裏で暮らしていましたが、里親を探すなどして、現在は4匹の猫と共に生活しています。犬派だった私ですが、一緒に暮らすことで猫の魅力に気づかされました。
ーー今後の展望をお聞かせください。
当事務所は、弁護士2人と事務員で構成されています。規模が大きな事務所ではありませんが、それでも、私を選んで相談に来てくれる依頼者がいることに日々感謝しています。目の前の仕事に全力を注ぎながら、自己研鑽を欠かさず、成長していきたいと考えています。
技術の進歩により交通事故の件数は減少傾向にあり、今後数年でさらに減ると予想されます。一方で、電動キックボードによる事故や自転車による交通違反に反則金制度が導入されるなど、新たな問題や課題も生じています。これらの変化に適応し、依頼者に対して最適なサポートを提供していきたいと考えています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えている方へメッセージをお願いします。
弁護士の元に相談に来られる方々の多くは、問題が顕在化してから訪れるケースがほとんどです。しかし、私たち弁護士が常に感じるのは、「もっと早く相談に来てくれれば良かったのに」ということです。
問題が大きくなる前に相談していただければ、適切なアドバイスを提供し、迅速に解決することが可能です。弁護士費用を気にして問題を先延ばしにした結果、多大な損害を受ける可能性もあります。早い段階で相談することで、最終的にはコストを抑えることができます。
弁護士への相談は敷居が高いと感じる方も多いかもしれませんが、私はそうは思いません。弁護士が特別偉い存在だとは考えていませんので、ぜひ気軽に相談に来てください。