社労士の経験を活かして労働事件に注力し使用者・労働者双方をサポート、高齢者問題にも取り組む
社労士としての仕事に限界を感じて弁護士に
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
前職の社会保険労務士の仕事に限界を感じたことが、弁護士を目指したきっかけです。
社労士時代は、就業規則の作成などに携わり、労働者から、働く上での悩みを相談されることもありました。しかし、労働者が法律トラブルで悩んでいても、社労士が代理人となって交渉するといったことはできません。弁護士以外が、他人の事件の代理や仲裁をすることは、弁護士法72条で禁止されているからです。
ちょうどその頃、社労士会が、社労士も労働局のあっせんの代理権を獲得しようという運動をしていて、その一環で母校の法学部の先生の講義を受ける機会がありました。そこで先生が、司法制度改革の一環としてロースクールが創設され、社労士も弁護士になるチャンスがあると話していたんです。私の年齢でも目指せるか質問すると、「頑張ってください」と激励してもらえました。単純ですが、その言葉を信じて、ロースクールを受験して入学し、卒業と同時に司法試験に合格することができました。
労働事件と高齢者問題に注力
ーー弁護士になられてからの注力分野を教えてください。
社労士の経験を活かして、労働者側・使用者側双方の労働事件に注力しています。
労働者だけではなく、使用者からの相談も受けている理由は2つあります。1つは、労働者の中には、法律の知識を使って使用者に無理な要求をする人がいるためです。使用者からそのような労働者について相談を受けた場合には、使用者側の代理人となって労働者に対抗することも必要だと思います。
もう1つは、使用者側の代理人になることが、結果的に労働者の保護にもつながるからです。たとえば、就業規則を作成するときに、労働者が不利になる規則を作らないよう使用者に働きかけることで、トラブルを防ぎ、労使双方が気持ちよく働ける環境を作ることができます。
ーー高齢者問題にも力を入れていると伺いました。取り組むようになったきっかけを教えてください。
弁護士会の高齢者・障がい者の権利に関する委員会に入ったことがきっかけです。私が弁護士になった当時、母は認知症で施設に入り、父は1人での生活が難しかったためホームヘルパーに来てもらっていました。高齢者問題は私にとっても切実な問題で、弁護士になる前から関心を持っていたんです。
委員会の中の虐待防止部会に所属し、高齢者虐待の案件について経験を積みました。委員会からの推薦を受けて、行政や社会福祉協議会などが主催する、虐待防止や成年後見制度に関する講演会もおこなうようになりました。
講演会では、高齢者問題の延長線上にあるものとして、相続の話もします。相続について誤解をしている方が多いので、正しい知識を伝えたいと思っています。
例えば、子どもがいない夫婦の場合、一方が亡くなったときに財産が全て配偶者に相続されると思っている方が多いです。しかし実際は、亡くなった方の兄弟姉妹やおい・めいも相続人になります。配偶者に財産を全て相続させたい場合は、その旨を書いた、簡単な自筆の遺言書を残しておくだけで問題を回避することができるのですが、そうとは知らずに何も対策をしないまま亡くなり、残された親族の間でトラブルが発生するケースはよくあります。
遺言書を残すという簡単な対策でトラブルを避けられることを、講演会などを通じて伝えていきたいと思っています。
ーー弁護士として心がけていることをお聞かせください。
高齢の依頼者が多いので、説明には時間をかけるようにしています。こちらの言っていることを理解していただけないと、手続きが進められません。一般向けの本なども使いながら、依頼者が納得するまで根気強く説明します。
これは成年後見制度の相談でも心がけていることです。高齢者の家族や行政の職員が成年後見制度を利用したいと考えていても、本人が制度の利用に納得していない場合があります。こういった場合にも時間をかけて、周囲の方と協力しながら説得します。
ーー弁護士として活動される中で、特に印象に残っているエピソードをお聞かせください。
現在注力している労働事件や高齢者問題とは異なる分野ですが、弁護士になって数年後に担当した事件が印象に残っています。
別居中の夫が、妻と暮らしていた当時2歳の子どもを、両親に会わせるために預かりたいと要求しました。妻が要求を受け入れて、夫と子どもは出かけて行ったのですが、その後、2人の行方がわからなくなったんです。
妻からの相談を受け、考えられる限りの裁判所の制度(例えば、最近はほとんど使われない、人身保護法など)を使いましたが、結局、裁判所には夫や子供の居場所を調査する権限や能力がないことが理由となって上手くゆきませんでした。そこで、最後の手段として、刑事告訴を行いました(実の父親であっても誘拐罪に該当するという判例があったのです)。結局、刑事告訴は受理されませんでしたが、検察と警察はかなりの労力を割いてくれて、夫と子どもの居場所を突き止めることができました。そこで私は、子どもを妻に引き渡すよう夫を説得しましたが、応じてもらえず、最終的には家裁の「審判前の保全処分」と、地裁の執行制度を利用して子どもの取戻しに成功しました。いわゆる東日本大震災(2011.3.11)が、執行の1週間後に起こったこともあって、今でもいちばん印象に残っている事件です。
「まずは早めの相談を」
ーー休日の過ごし方を教えてください。
休みの日は自宅にいることが多いです。愛犬と遊んだり、ドラマや映画を観たりしています。読書も好きです。昔は小説をあまり読まなかったのですが、最近はハードボイルド系や経済小説をよく読むようになりました。半沢直樹シリーズなど、経済小説が原作のドラマも好きで、原作もドラマも両方楽しんでいます。特に、WOWOWのドラマは社会派の作品が多いので見応えがありますね。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
それなりに年齢を重ねてから弁護士になったので、健康に気をつけながらできる限り活動を続けていきたいと思っています。事件は選ぶことなく、どんな相談でも誠実に対応します。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
弁護士は敷居が高いイメージがあるかもしれませんが、気軽に電話してください。相談内容によっては、電話口で無料のアドバイスをすることもあります。それだけでは解決が難しい場合は、事務所でじっくりお話を聞き、解決方法について丁寧に説明します。1人で悩んでいると事態が悪化してしまうこともあるので、まずは、早めに相談してください。