弁護士ドットコム - 無料法律相談や弁護士、法律事務所の検索

2014年01月12日 14時37分

患者側の「勝訴率」はわずか2割 「医療過誤訴訟」はなぜ難しいのか?

患者側の「勝訴率」はわずか2割 「医療過誤訴訟」はなぜ難しいのか?

命にかかわる病気で、もし家族が誤診されたら――。妻(当時28歳)が死亡したのは、救急搬送された診療所で誤診された結果だとして、夫(31歳)が昨年12月、診療所の男性院長などを相手取って計約9000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

報道によると、妻は昨年8月、激しい腹痛を訴え、東京都内の診療所へ搬送された。治療にあたった男性院長は「急性胃炎、過呼吸症候群」と診断して処置したが、女性は翌朝死亡した。行政解剖で、死因は「子宮外妊娠破裂による腹腔内出血」だったと分かった。遺族側は、妻の妊娠のことは救急隊員を通じて医師に伝わっていたのに、医師が超音波検査などをしなかったため死亡したと主張している。

最高裁の資料によると、医療過誤の民事訴訟は年間、約800件に上る。高い専門性が必要なため、通常の民事裁判よりも審理に時間がかかる。さらに訴えた患者側の主張が通る勝訴率は、約2割にすぎない。通常の裁判では8割だから、医療過誤で裁判を起こすには、極めて厳しい覚悟が必要になるようだ。しかし、それでも患者本人や残された遺族は、医師の謝罪を求め、何が起こったかを知りたいがために提訴する。

なぜ、患者側が勝訴することが難しいのか。裁判では、誰がどのように医療ミスを立証していくのか。医療訴訟にくわしい浅尾美喜子弁護士に聞いた。

●過失が明らかな事案は「示談」になりやすい

「医療過誤事件においては、患者側の弁護士は、訴訟にする前に医療機関側と話し合いの機会を持つのが通常です。医療機関側の過失が明らかな事案では、この話し合いの段階で、医療機関が自らの過失を認めて示談にする例がほとんどです。

つまり、医療機関側の過失が相当程度明らかな場合は、訴訟にはならず、訴訟前和解(=示談)で解決されるということです。

したがって、訴訟にあがってくる案件は、必然的に過失の有無が明らかではない、立証が困難な案件と言うことになります。これが、医療事件で、患者側の勝訴率が低くなる理由の1つです」

浅尾弁護士はこのように指摘する。医療事件の裁判は、一般事件の裁判と何か違いがあるのだろうか?

「まず、医療事件における過失は、『一般の方が考える過失』とは微妙に異なります。たとえば、治療が奏効しなかったとしても、その治療が標準的な治療水準に達していれば、過失が認められないケースも多々あります。

また、医療行為は専門性が高いので、過失の立証が通常事件より難しい、といった問題もあります。

さらに、医療機関側の過失は原告(患者側)が立証しなければなりませんが、一般的に医師は医師をかばう傾向があり、過失があったと証言してくれる医師を見つけることは、至難の業です」

浅尾弁護士はこのように医療訴訟の特徴を指摘したうえで、「医療事件で患者側の勝訴率が低くなるのは、医療がきわめて専門的で閉鎖性が高い分野だから、という側面があります」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

浅尾 美喜子弁護士
浅尾 美喜子 (あさお・みきこ)弁護士
第一東京弁護士会所属。慶應義塾大学経済学部卒 被害者弁護委員会委員 成年後見委員会委員 元常議員会委員
所在エリア:
  1. 東京
  2. 中央区
弁護士ドットコム 協力ライターの募集中!募集要項はこちら

この記事へのコメント

Facebook

弁護士コメント

本コメント欄は弁護士のみ書き込むことができます。
コメントを投稿するにはログインが必要です。

※ご利用の際は弁護士ドットコム利用規約及びFacebook利用規約を遵守してください。
※弁護士ドットコム株式会社はコメントの内容等によっては通報等の措置を取ることができるものとします。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して弁護士ドットコム株式会社は一切の責任を負いません。