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2018年10月05日 10時01分

シングルマザーの奮闘を映画化 「明日は我が身と思って観て」監督が話すワケ

シングルマザーの奮闘を映画化 「明日は我が身と思って観て」監督が話すワケ
松本和巳監督(右)

シングルマザーが直面する孤独とは何か。周囲にSOSを発することもできずに追い込まれていくシングルマザーが、人生を切り開く様を描く映画『single mom 優しい家族。a sweet family』が10月6日に公開される。監督・脚本の松本和巳氏に話を聞いた。(ライター・須賀華子)

●「5カ月のお腹の赤ちゃんを中絶して」

ーー映画のなかでは、主人公・愛実(内山理名)が困窮し追い詰められていく姿がリアルに描かれていますね

「誰しも毎日のリアルな姿って他人に見せたくないですよね。ましてや自分が貧困に苦しむ姿なんて絶対他人に見られたくない。でも、その姿を知ってもらわないと、シングルマザーが置かれた状況について理解してもらえない。

シングルマザーの貧困に限らず、社会課題と言われる状況には、外からは見えない部分があって、そこを知ってもらうことで初めて『課題』として認識されます。外からは見えにくいシングルマザーたちのリアルな姿を映画にすることに意義があると思ったんです」

ーー映画を撮影する前に、多くのシングルマザーに会われたそうですね

「はい。親交のあった一般社団法人『日本シングルマザー支援協会』会長の江成道子さんにも協力いただき、多くの方にお会いしたのですが、本当にシビアな状況の方が多かったです。映画の主人公・愛実の状況は大袈裟に描いたものではなく、リアルな姿だと思って観てもらいたいです。取材で会ったシングルマザーたちのエピソードも映画の中に折り混ぜていますが、実際はとても出せないようなエピソードもたくさんありました。

例えば映画のなかで、ある女性がパートナーの男性から、5カ月のお腹の赤ちゃんを中絶するよう言われるシーンがあります。でも実際に会ったお母さんは、もっと週数が進んだ段階で言われた言葉だったんです」

●フードバンクで見たのは「明るい母子」の姿

ーーNPO法人「子育てパレット」が運営するフードバンクに、スタッフとして参加されていると聞きました

「そうなんです。実は、フードバンクって、暗い表情で来る方々が多いのではと勝手な先入観を持っていたんです。それが実際行ってみたら、お母さんも子どもたちも、みんな満面の笑顔で来ていて、とても明るい雰囲気で。

取材をせずに間違ったイメージを発信してしまっていたら、フードバンクに来る親子を変に『かわいそう』という誤解を与えることにもなってしまったし、そうなるとフードバンクの持つ意味も薄れてしまいます」

ーーフードバンクの持つ意味が薄れるとは

「親子がそうした場に行くことがネガティブになってしまったらダメなんです。そこが貴重な『話せる場』にもなっているので。

僕は今でもフードバンクのスタッフとして働いているのですが、初めて来たときに、今にも子どもに殴りかかりそうなくらいピリピリした雰囲気だった母親がいました。精神的にかなり追い詰められていたんでしょうね。それが1年くらい通うなかで話してもいい雰囲気を感じてくれたようで、徐々に我々スタッフにも色んな話をしてくれるようになって。

そうしたらお母さんの表情が見違えるように変わってきたんです。もちろん子どもに対しても優しい表情になっていって。その姿を見て、本当にシングルマザーたちは話せる場所がないんだなと思いました」

●「目に見えない部分を理解することが、成熟した社会に繋がる」

ーーどうすればいいのでしょう

「大切なのは『知ること』です。日本社会は離婚に対してハードルを高く持っているなど、変な『常識』がたくさんあって。『どんな生き方をしてもいいよね』、『こういう人がいてもいいじゃん』って思えないと偏見はなくならないし、政府が掲げるダイバーシティーだって進まない。

そのためには、ものごとの結果だけでなくその過程も知る必要がある。世の中を見ているとどうも『離婚をした』、『子どもを殴った』などその事象ばかりに注目して『ダメな母親だ』とレッテルを貼る傾向があります。

でも、その人なりの理由がある。そうしたものが蓄積されて沸点に達した時に爆発するんです。その追い込まれていく過程にこそ課題の本質が詰まっている。だからそうした目に見えない部分を理解することが、成熟した社会に繋がるのだと思います。そういう意味でも映画のなかでは、主人公の愛実が追い込まれていく過程を大事に描きました」

ーー多様性が認められると、生きやすい社会になりますね

「たとえばママ同士の会話で、相手がシングルマザーだからパパの話には触れない、など善意であるにしろ区別をして接していると、区別される側は敏感に感じてしまうものです。だから、逆にそんなこと気にしないで、自然にコミュニケーションをとっていいと思うんですよ。

結局のところ多様性とはそういうもの。外国人もLGBTも障がい者もいてよくて、フラットに会話をして、『ふーん、そうなんだ』くらいの感じで接することができれば違和感もないしお互いに気楽な関係でいられる。そういう関係でいられれば、いざ困ったときにも助け合えるんじゃないかな」

●「収益の一部は、子どもたちの支援に」

ーー今回の映画は、収益の一部がシングルマザー家庭の子どもたちの支援に向けられるそうですね

「映画の成り立ちが『知ってもらいたい』というところにあったので、映画の利益の一部を社会でシェアしたいと思ったんです。ランドセルや制服が買えなくて学校に行きたくないという子どもも多数いるそうです。そうした子どもたちを支援できたらと。映画を観ること自体が、『支援する』というアクションにつながって欲しいと期待しています」

ーーこれから映画を観る人たちにメッセージをお願いします

「今の時代、誰にとっても孤独はすごく身近です。一人で悩みを抱えて、頑張っている人や孤独を抱えている人は数多くいます。シングルマザーだけでなく、シングルファザーはもちろん、夫が忙しくて一人で育児しているお母さん。一人暮らしで普通にOLをやっている女性でも、悩みを抱えて孤独に頑張っている人って多くいると思います。そうした方々には、共感してもらえるのではないでしょうか。

もしこの映画をサラリと観られた人は、すごく幸せに生きてこられた方なのでしょう。でも、どんなに幸せな家庭生活を築いていても、突然離婚を言い渡されたり、事故で死別したりと、『もらい事故』みたいなことって意外と多くあります。主人公・愛実に『明日は我が身』という意識を持ちながら、自分に重ねて観てもらえたらと思います」

【映画情報】

「single mom 優しい家族。」

出演:内山理名 阿部祐二 石野真子 木村祐一

監督・脚本:松本和巳

公式HP: http://www.singlemom.click/

10月6日ヒューマントラストシネマ有楽町にて公開ほか全国順次(10月6日 ヒューマントラストシネマ有楽町で、12:10〜上映回の上映後に舞台挨拶。内山理名、木村祐一、松本和巳監督らが登壇予定)

(弁護士ドットコムニュース)

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