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2018年08月21日 09時36分

子どもを取り巻く課題伝えたい…演劇「もがれた翼」、弁護士が舞台に立ち続け25回

子どもを取り巻く課題伝えたい…演劇「もがれた翼」、弁護士が舞台に立ち続け25回
稽古の様子(左が田畑弁護士)

子どもを取り巻く課題について、弁護士たちが演じる劇「もがれた翼」の新作「パッチワーク」(主催:東京弁護士会)が8月24日、25日に東京・赤坂の赤坂区民センターの区民ホールで上演される。「もがれた翼」は1994年の子どもの権利条約批准をきっかけに始まり、今年で25回目。扱うテーマは、いじめ問題や児童虐待、少年事件、子ども食堂、子どもの手続代理人など、社会や制度の変化を反映し毎年異なった内容となっている。(藤井智紗子)

●実体験に基づく、リアルな芝居

「ハッ、ハッ、ハッ」

8月中旬の平日夕方、東京・霞が関の弁護士会館の一室で、「もがれた翼」の稽古が始まった。その日の業務を終えた弁護士たちや、出演する子どもたち計16人が集まり、発声練習を始めた。その後、台本をもとに、それぞれのシーンの練習に熱が入っていた。

稽古の前、出演する田畑智砂弁護士に話を聞いた。田畑弁護士は「参加しているのは、日々、子どもたちと向き合っている弁護士です」と語る。

「もがれた翼」は、東京弁護士会の「子どもの人権と少年法に関する特別委員会」の活動の一環だ。シンポジウムのような形式ではなく、委員会のメンバー自らが出演する劇を通じて、広く問題を知ってもらおうと企画している。

田畑弁護士は「脚本も、児童福祉の現場にいる方の手作りです。実際にあった事件をそのまま描いているわけではありませんが、東京弁護士会に寄せられた相談や本当にあった事案をもとに、リアルなお芝居にしています」と語る。

出演者の中には、過去に演劇をしたことのある弁護士もいれば、全く経験のない弁護士もいるという。出演する役柄も様々で、弁護士が弁護士を演じることもあれば、施設職員や虐待親を演じることもある。

スケジュールとしては、裁判所が休廷期間を迎えることもあり、8月に上演することが多い。今回の場合は、7月下旬に出演者に台本を配り、8月の本番まで、夕方を中心に週に3、4回程度(本番直前はほぼ毎日)、稽古をするというから、なかなかハードだ。

●「カリヨン子どもセンター」舞台に描いた夢が、現実に

「もがれた翼」が始まってから25回、全ての舞台に立ち続けてきた、登坂真人弁護士はこう説明する。

「今と昔では、テーマも変わってきました。例えば、昔は少年非行といえば、暴走族の少年が出てきましたが、いまはほとんどいません」

さまざまなテーマを扱った中で、最も反響があり、さらには物語の設定が現実になったのが第9回の「こちら、カリヨン子どもセンター」だという。

「脚本を作った坪井節子弁護士が、子どもをかくまえるシェルターがあったらいいな、と思って書いたものが本当に実現しました。

芝居が終わった後、『これはどこにあるんだ』という問い合わせが東京弁護士会にたくさんきて、『そういう場所を作ろう』ということになったんです」

こうして生まれたのが、カリヨン子どもセンターで、日本初の子どものためのシェルターが開設された。

●今年のテーマは「子どもの権利を尊重した児童福祉」

今年のタイトルは「パッチワーク」。小さな布がつながって、大きな布ができるように、子どもの支援をつないでいくことと、ばんそうこうのように傷口をふさぐ「パッチ」の2つをイメージしているという。

テーマは「子どもの権利を尊重した児童福祉」。2016年の児童福祉法改正では、1条に、すべての子どもが適切に養育され、生活を保障され、愛され、保護されることなどの権利を有することが明記された。そこで今回、義務教育を終えて、社会で自立を目指す子どもたちが暮らす施設「自立援助ホーム」を舞台に、児童福祉のあり方を考える。

主人公は、虐待被害や非行などの過去をもつ5人の少女たち。自分自身の思いや葛藤をうまく表現できず、生きづらさを感じながらホームにやってくる。彼女たちを支えるホーム長、施設の職員、弁護士などのさまざまな大人たちとの関わりを通じて、自立に向けた新たな生活を歩む。

田畑弁護士は、「児童福祉の現場は、お金も人手も足りなくて、ついつい、子どものためにしてあげる、という目線になりがちです。でも、生活を保障されたり、ケアをされたり、意見を表明したりするのは、子ども自身の権利なんです。

子どもたちが自分の人生を自分で選択し、幸せになるために、大人たちが、どう子どもたちに関わるべきなのかを考えるきっかけにしたいです」と狙いを説明する。

●「子どもの問題は、とても難しい」

少年少女たちの物語というとつい成長物語を想像しがちだ。しかし、田畑弁護士は「子どもたちの支援に卒業はない」と語る。

「子どもの事件は、とても難しいんです。さまざまな困難が続いて、どこまでも、これでおしまい、ということがありません。なかなか一直線に幸せにはなれないのです。

子どもの問題に向き合う人たちは、いつも終わりはない、と思いながら日々、向き合っています」

<舞台情報>

「もがれた翼 パート25 パッチワーク」

(日時)8月24日(金)午後6時30分開演、

8月25日(土)午後1時開演(昼の部)、午後5時開演(夜の部)

(場所)赤坂区民センター区民ホール(東京都港区赤坂4-18-13 赤坂コミュニティーぷらざ内)

入場無料、全席自由、先着順

(弁護士ドットコムニュース)

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