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2017年03月07日 09時56分

「色だけ商標」第1号にトンボ鉛筆、セブンイレブンーー法的にどんな意味がある?

「色だけ商標」第1号にトンボ鉛筆、セブンイレブンーー法的にどんな意味がある?
特許庁のリリース

特許庁は3月1日、色の組み合わせである「色彩」を初めて商標として登録すること発表した。セブンイレブン・ジャパンが看板などで使用している「白地にオレンジ・緑・赤」の色彩と、トンボ鉛筆が消しゴムカバーで使用している「青・白・黒」の色彩が認められた。

特許庁は、色彩のような新しいタイプの商標について、「言語以外の多様なブランド発信手段として、企業のブランド戦略に大きな役割を果たすことが期待される」としている。

登録手続きが完了した後、同様の色彩を用いて商品を販売するなどした場合、商標権侵害となる。特許庁によると、カラーリングの割合・色などが、登録された色彩と厳密に同じではなくても、色彩が「類似している」と判断されれば商標権侵害にあたる可能性があるという。

色彩に商標が認められるのは初とのことだが、誰でも好きな色彩を出願すれば、登録が認められるのか。色彩が商標として認められることに、どのような意義があるのか。商標の問題に詳しい冨宅恵弁護士に聞いた。

●「文字や図形と切り離して、色彩だけを単独で登録することができるように」

2014年の商標法改正によって、音、ホログラム等とともに新たに登録の対象となったのが、色彩のみからなる商標です。

改正前では、文字、図形、記号、立体的形状等と色彩を組み合わせることで色彩を登録することができましたが、改正により、文字や図形等と切り離して、色彩のみを単独で登録することができるようになりました。

ご存じのとおり、商品やサービスを提供する際に、統一したイメージカラーによって、誰が提供している商品、役務であるかを特定してもらうということが一般的に行われています。

今回登録の対象となった「トンボ」や「セブンイレブン」もその例です。

そもそも、商標は、「誰が提供している商品や役務であるか」を特定してもらうもの(出所表示)であり、色彩のみによって構成されたものであっても出所表示として機能しているという現実に則して、今般商標の登録対象として認められることになったのです。

●「単一の色彩のものについては保護の対象としない」という考え方が確立

出所表示を保護する法律には、特許庁への登録を前提に保護の対象とする商標法以外に、事前の登録を必要とせず、周知になった、あるいは著名になった等の事実に基づき保護を与える不正競争防止法があります。

そして、色彩のみからなる表示の問題は、不正競争防止法の分野では、かなり以前から判決が存在し、単一の色彩に出所表示としての機能が認められるかという問題については1966年に、複数の色彩の組合わせに出所表示としての機能が認められるかについては1983年に判決が下されています。

その後も、不正競争防止法の分野では、裁判所での議論が進み、数々の判決が下されてきました。それらの判決では、色彩そのものの出所表示としての機能については一貫して肯定され、複数の色彩を組合わせたものについては保護の対象とするものの、「単一の色彩のものについては保護の対象としない」という考え方が確立されています。

●「色彩」を特定の個人や企業に独占されてしまうおそれはないのか?

そもそも、色彩というものは、誰しも自由に使用することができる万人共有の財産です。これを単独の者に独占させることの危惧感が裁判所にはあり、上記したような判決の傾向として表れているのです。

比較的近時の判決の中には、単一の色彩の独占を認めれば、最も遅く参入した者に選択できる色彩がなくなるとまで言い切ったものもあります。

この判決の内容は極端ですが、裁判所の色彩を独占させるにあたっての考え方を非常に端的に示されているといえます。

特許庁における色彩のみからなる商標登録についても、このような裁判所の考え方を尊重すると予測されており、法制度上では単一の色彩も登録対象に含まれるとされていますが、運用面では、当面の間、単一の色彩が登録される可能性は極めて少ないのではないかと思っています。

今回登録された「トンボ」や「セブンイレブン」の例は、裁判所が以前から不正競争防止法の出所表示性の問題で示していた判断基準に合致するものであり、当面の間は、このような複数の色彩を組合わせものが登録の対象になるのではないでしょうか。

(弁護士ドットコムニュース)

冨宅 恵弁護士
大阪工業大学知的財産研究科客員教授
多くの知的財産侵害事件に携わり、プロダクトデザインの保護に関する著書を執筆している。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。
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