2019年04月05日 09時56分

ネット宝石販売で「ニセモノ」横行 「市場をフェアに」ITベンチャーの挑戦

園田昌也 園田昌也
ネット宝石販売で「ニセモノ」横行 「市場をフェアに」ITベンチャーの挑戦
リカラットのCEO小山さん(左)、COOの岡部達也さん

ネット通販(EC)市場が拡大する中、商品がニセモノだったというトラブルが後を絶たない。しかし、だまされたことに気づけるのなら、まだ良い方かもしれない。中には、ニセモノであることを知らず、顕在化しない事例もある。

たとえば、パワーストーンを含む宝石類。近年、知識がない業者が宝石などを輸入販売する事例が増えている。中には、仕入れ業者にだまされ、ニセモノを売ってしまうことがあるという。

また、バブル期に購入した宝石類が、ニセモノと分からないまま相続され、中古市場に出回ることもあるそうだ。偽宝石、鑑別の現場を訪ねた。(編集部・園田昌也)

●写真だけでわかるニセモノも珍しくない

「『この石でこの色はない』とか『模様や色合いが明らかに不自然』といったものが平気で売られています」

こう話すのは、宝石ベンチャー「RECARAT(リカラット)」社長の小山慶一郎さん。実家は福岡県の質屋で、IT企業DeNAをへて、宝石鑑定業界に参入した。

高齢化が指摘される宝石鑑定士では珍しい30代だが、米国宝石学会(GIA)の資格を持ち、宝石の売買実績は100万石を超えるという。

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リカラットは、宝石の売買をメインにしつつ、2018年6月からLINEを使った無料の宝石鑑別サービス(1人1石)もスタートさせた。相談者からはネットショップのURLや、本人が撮影した実物の画像が送られてくるという。

依頼数は1日10〜15件ほどだが、そのうちの約3割は画像だけでも分かる明らかなニセモノだという。

しかし、プロにかかれば一目瞭然でも、宝石は天然もの。1つ1つ違うし、種類も多い。知識や経験のない一般消費者が判断するのは難しい。

加えて、宝石鑑定業界は、盗難防止などのため、身内など限られた人で固められている組織が多いという。情報が外に出づらく、一般の人が得られる知識は限られている。

小山社長は、「宝石の真贋を判断する『鑑別機関』も、業者を相手にしていて、基本的に個人は対象外です。本物かどうか迷っても、消費者がどこに聞いたら良いかわからないのが現状です」と、鑑別サービスを始めた理由を語る。

●仕入れ先を信じたらだまされた…

近年、市川春子さんの『宝石の国』や二ノ宮知子さんの『七つ屋志のぶの宝石匣』など、マンガやアニメをきっかけとして、宝石への関心が高まっている。

需要の高まりから、ネット通販(EC)業者がネットで安価な商品を売ることが増えているそうだ。しかし、もともと専門ではないので仕入れ先にだまされてしまうこともあるという。

たとえば、リカラットでは、あるネットショップからの鑑別依頼(有料)で実物を調べたところ、すべてニセモノだったことがある。

この店は「世界三大ヒーリングストーン」として有名な「ラリマー」や「スギライト」を仕入れたつもりだったが、鑑別したところ、模造石や着色したクォーツ(石英)だとわかったという。

宝石の中でも、ダイヤモンドなど高価な「貴石」と違い、そうではない「半貴石」はまとまった量で輸入される。その分、輸入業者のチェックは手薄になる。

さらに、加工してつくった商品の値段は1万円以下のことが多い。この価格帯で、鑑別機関に依頼して、鑑別書をつけるとなると採算はとりづらい。結果として、ニセモノが放置されてしまう構図があるようだ。

このほか、リカラットには、「相続した宝石が何かわからない」という鑑別依頼もよくあるが、ニセモノであることも珍しくないそうだ。

「特にバブル時代には、詐欺も少なくなかったようです。持ち主が亡くなり、だまされて買ってしまった宝石が中古市場に出てくるようになりました。鑑別書があっても、ニセモノということもあります」(小山社長)

●買取価格が全然違う

宝石は鉱山由来のため、新しいものの数は限られている。新品宝石の市場は2000年代の初頭に比べ、大きく減った。代わりに中古市場の規模は数倍にも拡大している。

「だまし」は買うときだけでなく、消費者が中古として売るときにも起きうる。

日経新聞は、2015年6月26日付の記事で、宝石の買取価格が店舗によって大きく異なることを伝えている。

記事によると、ダイヤモンドとエメラルドの指輪を約20店で査定してもらったところ、ダイヤは最高35万円、最低1万5000円。エメラルドは最高20万円、最低1万1000円とそれぞれ20倍前後の差がついた。

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記事によると、エメラルドなどの「色石」は価値判断が難しく、石そのもののに値段をつけない店舗があったことが、価格差に結びついているという。

しかし、一部には不当に安く買い叩く買取業者がいるのも事実のようだ。デザインや品質もあるから、ある程度の差は理解できるが、情報格差を利用して、ニセモノと同じような価格を提示されたらたまらない。

小山社長は、そんな「だますか、だまされるか」という宝石の売買を「公平で透明にしたい」と語る。

そのため、宝石の知識や鑑別過程をオウンドメディア「RECARAT online」やSNSで発信。自社で扱う宝石類についても、同世代の鑑別機関と提携し、信ぴょう性には細心の注意を払っているという。

●プラットフォームの対策困難

現在、リカラットに寄せられるニセモノ宝石トラブルのほとんどは、フリマアプリ「メルカリ」で起きているという。巨大プラットフォームの宿命といえるだろう。

「取引が手軽だから、若い人も宝石を買う。メルカリで宝石は身近になりました。ただ、初めて手にする宝石がニセモノであってほしくはありません。鑑定結果を知り、泣き出してしまう方もいます」(小山社長)

メルカリとしても、安心して取引できる環境をつくるため、出品物全体の監視を強化している。

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たとえば、過去の膨大な取引データを分析し、AIがニセモノの疑いがある品物を検知するシステムがあるという。

また、ブランド企業と連携し、企業からの通報や勉強会などを通じて、偽ブランド被害を減らす取り組みも進めている。

このほか、メルカリ内部にいる、ブランド品の鑑定経験者のノウハウを共有し、目視でのチェックにも力を入れているそうだ。

もしも商品がニセモノだった場合でも、状況に応じて、メルカリが最大全額を保障する仕組みもある。

ただし、宝石は専門性が高く、当事者が気づかないことも多い。AI用のデータ集積が進まず、被害を食い止めるのが難しい側面もあるようだ。

「報告されている宝石トラブルのボリュームは小さい。増えていくようなら、特化した対策を練っていくことになる」(広報担当者)

●費用や労力と見合わない→ニセモノの温存へ

宝石業界にくわしい新田真之介弁護士は、偽宝石の一番の問題を「泣き寝入りしてしまう人が多い」ことだと指摘する。

「1つ1つの被害は比較的低額で、弁護士に委任して訴訟等で請求しようとしても、弁護士費用に見合わない」

法律上は救済されうるものの、現実的には費用倒れになってしまう。集団訴訟のような形でない限り、裁判という選択肢は取りづらい。

そうなると、弁護士を通さなくても良い「民事調停」などを検討することになる。裁判と比べ、手続きやルールが緩和されているため、比較的費用をかけずに話し合いで早期解決できる可能性があるという。

ただし、いずれにしても相手が「どこの誰か」を突き止めなくてはならない。この手間も法的手段を取りづらくさせている。

「訴訟提起や調停申立にも相手方の氏名や住所等が必要です。ネットなどで購入する際は、信頼できるサイトを使うことはもちろん、掲載されている売り手の住所が実在するかを購入前にグーグルマップで確認してみるなどの予防策をとっておくのが賢明です。

将来的には、宝石関連団体によるADR(裁判外紛争処理手続)の創設や、交通事故分野などで普及している『弁護士費用保険』を会員向けに付けるようなサービスがあると良いなと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

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