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マルチ商法、大学時代の友人から突然の勧誘「このビジネスの良さがわからないのはおかしい」
画像はイメージです。(bee / PIXTA)

マルチ商法、大学時代の友人から突然の勧誘「このビジネスの良さがわからないのはおかしい」

「久しぶりにあった友人とご飯に行ったら、マルチ商法の勧誘を受けて…」

こう話すのは、首都圏在住のマサカズさん(20代男性・仮名)。大学時代の友人が「会社とは別にビジネスで稼いでる。詳しい話をするよ」と言うので、東京都内で待ち合わせをしたところ、マルチ商法(ネットワークビジネス)の勧誘を受けたそうです。

「会ってから『静かに話せるところがあるからそこに行こう』と言われて、そのマルチ商法を行っている企業のビルに連れていかれました。そこでカタログを見せられながら、洗剤などの商品の説明を受けたんです。事前にその企業に行くということは伝えられませんでした」

直接的に「始めてみようよ」とは言われなかったものの、入会金などについての説明を受けたそうです。友人はあくまで「俺は良いものを教えたいだけ」というスタンスでしたが…。

「友人や周りの人からの信用を失うのは確かなのに、このビジネスの良さを分からない方がおかしいと言い切ってくるんです。最初はショックでしたが、だんだん哀れに感じました」

●勧誘目的を事前に告げていなかったことは違法

マルチ商法(ネットワークビジネス)は、商品・サービスを買った会員が、友人や知人など新たな買い手を探し、買い手が増えるごとに利益が得られる商法です。そのため、新たな会員を増やそうと、あたかも必ず儲かるかのような嘘の誘い文句で過剰に勧誘してしまい、消費者の生活や人間関係を大きく破壊してしまう危険性を持つ取引です。

特定商取引法では、「連鎖販売取引」と定義づけられており、細かな規制があります。

今回マサカズさんは契約こそしなかったものの、半ば強引な勧誘行為を受けました。「こういうのって、違法じゃないんですか?」と嫌気が差したようです。

今回のような事例について、消費者問題に詳しい柴田幸正弁護士は「友人が勧誘目的を事前に告げていなかったことは特商法に違反する勧誘と言えます」と指摘します。

「特定商取引法(特商法)は、消費者を保護するために、連鎖販売取引の勧誘にあたって、重要な事項を告げなかったり、事実と違うことを告げたり、解約を妨げるために脅したり、あるいは勧誘目的を告げずに公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘をしたりすることを禁止しています。

また、これに違反すると、業務停止などの行政処分の対象になるだけでなく、刑事罰の対象にもなります」

●たとえ親しい友人でも、毅然と断ることが必要

今回のマサカズさんの事例はどうでしょうか。

「入会金などの説明の中に、マサカズさんにも負担が生じることや解約条件が限られていることなど、マサカズさんに不利に思われる事柄も総て入っているかどうか疑問です。もしそのような説明がなければ、やはり特商法違反の勧誘行為になります」

こうした勧誘行為を受けてしまった場合には、どうすればいいのでしょうか。

「勧誘してきたのがたとえ親しい友人であっても、まず毅然と断ることが必要です。友人からの誘いであっても、お金の絡む話であれば慎重になるべきですし、少しでも変だなと思ったら、安易にその場で誘いに乗らないことが大切です。

また、消費者ホットライン(電話番号『188いやや』)や全国の消費生活センターなどに相談してみると、同じマルチ商法の被害者からの相談がほかにも寄せられている可能性もありますから、罰則適用のきっかけになるかも知れません」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

柴田 幸正
柴田 幸正(しばた ゆきまさ)弁護士 柴田幸正法律事務所
2008年登録、愛知県弁護士会所属。同弁護士会の労働法制委員会、消費者委員会所属。非常勤裁判官(家事調停官)。地元の瀬戸市を中心として、個人向けの一般民事・家事事件、中小企業向けの顧問業務などを取り扱っている。

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