子どもが10代後半にもなれば、親に内緒の活動も増えてくる。なかには、高額な商品を無断購入して、親を困らせる、ということもあるだろう。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにもそうした悩みが寄せられている。
子どもが未成年で、しかも免許もないのに、バイクを個人売買で購入してしまったというのだ。「親は認めてないので取り消しできますか? バイクも使用した状態でも大丈夫でしょうか? 何か法的な措置がいるのでしょうか?」と相談している。
バイクとなると高額だし、親としては免許もないのに乗って事故でも起こしたら……と心配だろう。このような場合、未成年の子どもが勝手にしたことだからと、購入を取り消すことはできるのだろうか。消費者問題にくわしい岡田崇弁護士に聞いた。
●原則として「取り消し」は可能だが、「例外」もある
「未成年者である子どもが、法定代理人(親)の同意を得ないで売買契約をした場合、原則的にはそれを取り消すことができます(民法5条1項、2項)。契約を『取り消す』と、法律的には売買契約が始めからなかったこととして扱われます。
契約を取り消す方法は、契約の相手方に何らかの手段で伝えれば足りますが、確実を期するためには特定記録や簡易書留などの記録が残る形の郵便で行う方がよいでしょう。特別な法的措置をとる必要はなく、子どもでも可能ですが、親がしたほうが確実です。
――バイクはどうすればいい?
「バイクはそのまま相手方に返せばOKです。未成年者がした契約を取り消す場合、『現存利益(現に利益を受けている限度)』で返還すればよいことになっています(民法121条1項)。
現存利益というのは、バイクの場合、いま残っている形で返せば良いという意味ですので、使用してしまった後でも問題ありません」
――未成年の買い物は、どんな場合でも、取り消せる?
「取り消せない場合が2つあります」
――それはどんな場合?
「1つ目は、買い物の金額が、親が子どもに目的を定めずに自由に使って良いとして渡したお金(小遣いなど)の範囲内であるときです(民法5条3項)。ただ、事故を起こせば親の責任も問われる可能性がありますから、『バイクの購入は、小遣いの使い道としては許されていない』と解釈されます。
このように考えれば、『バイクの購入を取り消せない』のは、子どもが親と別居していて、子どもが自ら稼いだお金で生計を立てているときに、稼いだお金の中からバイクを購入した場合などに限られることになるでしょう」
――もう1つは?
「バイクの購入時、子どもが『自分は成年である』とか『親の同意があった』と偽って、相手方を誤信させたときです(民法21条)。
なお、取り消せなくなるのは積極的にだます『詐術』があった場合で、未成年者であることを黙っていただけなら問題ありません。
これらの例外にあたるかどうかの判断は難しいため、少しでも疑問があれば弁護士に相談されることをお勧めします」