数年前に結んだ新聞の購読契約。記憶にないのですが有効なんでしょうかーー。トラブルになった男性から弁護士ドットコムに相談が寄せられました。
相談者によると、新聞販売店からのハガキが届き、裏面を確認したところ10年前の契約に基づいて配達を始めると書かれていました。慌てて問い合わせたところ、「契約は何年何十年たっても有効」と言われたそうです。
別の地域からも、亡くなった母が10年前に契約していたとして、新聞が届くようになったという相談がありました。
●大都市で注意喚起相次ぐ
10年も前となると、まずは本当に契約を結んでいたか、確認する必要がありそうです。
一方で、ちゃんと契約書などがあっても、契約から購読までの期間が空いている場合はトラブルになりやすいと言えます。新聞勧誘員の押しに負けて、仕方がなく契約していることが少なくないからです。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた、2018年度の新聞販売トラブルの相談は8783件(2019年7月31日現在)。2013年度から6年連続の減少となりましたが、それでも高い水準です。
こうした相談のうち、購読が数年先という事例はよくある類型だといいます。近年は複数の自治体がこうした消費者トラブルについて警鐘を鳴らしています。
たとえば、神戸市は2018年8月30日に発表した「新聞の購読契約トラブルについて」という資料の中で、60代女性からの次のような相談事例を紹介しています。
「自身は忘れていたが、平成25年に、平成30年からの購読契約をしていることを販売店の人から知らされて始めて思い出した」(ママ)
東京都が2019年1月18日に公開した「消費者注意情報」にも、認知症の母(80代)が次のようなトラブルに巻き込まれたという記述がありました。
「母の家で、新聞購読契約書を見つけた。契約日は2年半前で購読期間は今月から1年間となっている。母は当時から認知症で新聞は読めない状態であった」
同様の報告は大阪市のHP(2019年1月16日発表)などにもありました。
大阪市消費者センターの呼びかけ(2019年8月29日キャプチャー、下線は編集部)
●よほど長くないと契約無効にまではならない
「数年先の契約」になると、契約をしたことを忘れてしまったり、契約書がどこかにいってしまったりするかもしれません。生活スタイルや経済状況が変わることも考えられ、トラブルの種になりやすいと言えます。
前島申長弁護士は、「10年以上前の契約など、その古さによっては消滅時効や権利濫用などで無効になる可能性があります。しかし、一般的に問題となる契約締結後2〜3年後からの購読の場合、原則として購買者は契約に拘束されます」と話します。
締結した以上、原則として契約に拘束されるということです。よほど間が空かない限り、将来の購読を約束する契約が無効になる可能性は小さいようです。
ただし、契約のさせ方によっては無効になることもあるといいます。
「高齢で認知症の方が、契約の内容を十分理解しないままに契約を締結させられたような場合は、そもそも契約自体が意思無能力により無効とされる可能性があります」
「新聞勧誘に際してしつこく勧誘をされたり、家の中から出ていかないなどの心理的な圧迫・威圧があったような場合には、特定商取引法で規制される不当な取引行為に該当する可能性があります」
●景品が高額だと契約無効も?
さらに前島弁護士は、新聞を契約したときにもらえる景品の問題を指摘します。
「景品表示法では、新聞購読契約に伴う景品類は、取引価額の8%か、6カ月の購読料金の8%のいずれか低い金額の範囲までと上限が定められています。高額の景品類の提供はできませんので、高額の景品の提示には注意する必要があります」
2019年3月には産経新聞がこのルールに違反し、大阪府の措置命令を受けています。高額の景品で契約を結ばせた場合、契約そのものが無効になる可能性もあります。
「いずれにしても、新聞購読に際しては、購読の必要性をよく考えた上で適正な契約を締結することが必要と思われます」