空手の強豪校で女性顧問からパワハラを受けたとして、元女子部員2人が学校法人や顧問らを相手に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は6月13日、学校法人や顧問に計約120万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。
報道によると、2人は特待生として入学。態度を理由に高3時のインターハイ予選前に全体練習への参加を禁じられたり、希望する大学へのスポーツ推薦も拒否されたりしたという。
暴言や体罰など部活動の顧問によるパワハラ行為。ブラック部活に悩まされた場合、パワハラを立証するにはどうしたらいいのだろうか。学校問題に詳しい高島惇弁護士に聞いた。
●パワハラ被害を立証するためには?
「まず、外傷を伴う体罰については、怪我をした部位を写真撮影したり、当日医療機関で受診して診断書を作成してもらったりすることが重要です。このような証拠は、当時第三者から何らかの暴行を受けた事実を推認(根拠をもとに推測)させますし、損害を直接立証する点でも重要になります。
これに対し、外傷が残らない体罰や暴言については、ICレコーダーによる録音や部員の証言による立証が考えられます」
しかし、ICレコーダーによる立証は困難もありそうだ。
「体育会系の部活動の場合は、部活中ICレコーダーを保持し、録音するのは現実的ではありません。部員の証言についても、学校や顧問との関係悪化をおそれて在学中はなかなか協力してもらえないのが実情です。
その一方で、顧問のパワハラ行為が長年にわたって継続しており、OBOGを含めて不満を抱いている生徒が多数いる場合は、事件を契機として複数の部員が協力してくれるケースも存在します。同種の被害を受けている生徒や卒業生に働きかけるのが重要かもしれません。
その他、練習の様子を第三者が動画撮影しているケースもありますので、その場合は撮影した動画を提供してもらうよう働きかける作業が重要になります」
●証拠を集められなかったら?
証拠を集められなかったら、何もできないのだろうか。
「証拠を確保できない場合は、学校に対し調査報告を要請することが考えられます。
この点、さいたま地裁(平成27年10月30日判決)は、次のように、学校の調査報告に関する一般的義務を認定しています。
『教師による児童に対する暴行の疑いがある場合、当該児童の保護者はもとより、当該学校に在学する保護者が、暴行の存在の有無、対象児童の特定、暴行の原因、再発を防止する対策の内容等について知りたいと思うのは当然のことであり、学校がこれらの点を調査し、保護者らに報告するとともに、上記対策を講じ再発を防止する一般的義務を負うと解する』
この判例は下級審であって、暴行の疑いにのみ言及したものであるため、他の事案でも当然に調査報告義務が認定されるわけではありません。しかし、学校に対し調査報告を要請したにもかかわらず、怠った場合には、その懈怠(=けたい、本来行うべきことをやらなかった)につき、学校への損害賠償請求を検討する余地はあるかもしれません」
最後に高島弁護士は次のように指摘する。
「顧問のパワハラ行為は昔から多数指摘されているところであって、社会的に問題視されるようになった現状においても、一部の学校では未だに根強く存在するのが実情です。近年は、卒業後に法的措置を講じる生徒保護者もだいぶ増えてきました。将来的にパワハラ行為を立証すべく、在学中にきちんと証拠を確保する作業を行うことが重要だと思います」