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緊急避妊薬「薬局で販売して」厚労省に要望書提出 コロナ禍でNPO法人に妊娠相談増加
会見を開いた染矢さん(左)と遠見さん(東京・霞が関の厚労省記者クラブ、弁護士ドットコム撮影、2020年10月27日)

緊急避妊薬「薬局で販売して」厚労省に要望書提出 コロナ禍でNPO法人に妊娠相談増加

新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で若い世代からの妊娠相談が増える中、NPO法人などでつくる市民プロジェクトが10月27日、緊急避妊薬を処方箋がなくても薬局で薬剤師から購入できるよう求める要望書を厚生労働省に提出した。

要望書提出の様子(「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」提供) 要望書提出の様子(「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」提供)

72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を防ぐ緊急避妊薬(アフターピル)。手に入れるには医師の処方箋が必要だが、「産婦人科医に行きづらい」「仕事が休めない」「土日で病院がやっていない」など入手しづらいことが問題となっている。

提出後、プロジェクトの共同代表が都内で会見を開いた。産婦人科医の遠見才希子さんは「この問題は女性だけではなく社会全体の問題です。性の問題は誰もが当事者になる。性別年齢を問わず、声をあげて世論を高めていただきたい」と呼びかけた。

●世界約90カ国の薬局で緊急避妊薬を販売

NPO法人「ピルコン」代表で、プロジェクトの共同代表もつとめる染矢明日香さんによると、休校措置がとられていた2020年3〜4月、「ピルコン」が運営するメール相談に昨年の倍近い相談が寄せられた。

特に10代からの妊娠相談が多く、毎月10件程度だった相談が40件と4倍にもなった。相談の中には「生理が遅れて妊娠が不安」というものだけではなく、「避妊に応じてくれなかった」、「兄弟や母親の恋人から性暴力を受けている」など性暴力被害もあったという。

会見する染矢さん(左)と遠見さん(「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」提供) 会見する染矢さん(左)と遠見さん(「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」提供)

緊急避妊薬はWHO(世界保健機関)で「必須医薬品」に指定されており、世界約90カ国で医師の処方箋なしに薬局で購入できる。ただ、日本では2017年の厚労省検討会で、性教育の遅れや悪用・乱用への懸念などから緊急避妊薬の一般用医薬品(OTC)化は見送られた。

内閣府の男女共同参画会議の専門調査会は10月8日、「第5次男女共同参画基本計画」案で、「緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する」と明記した。田村憲久厚生労働相は10月9日、記者会見で「これまでの議論を踏まえ、しっかり検討していく」と述べている。

遠見さんは「緊急避妊薬は安全性は高くて、重大な副作用はない。安全な薬だからこそ、世界約90カ国の薬局で販売できている」と説明する。

「性暴力被害者が薬局で済ませてしまうのはいけないのではないか」「性教育が先ではないか」など、薬局の購入は慎重に進めるべきという意見に対し、遠見さんは以下のように話した。

「現在も産婦人科医が性被害の全てを診察できているわけではない。タイムリミットのある薬を安全に入手できる選択肢、支援につながるアクセスも複数あることが重要。性教育の問題と緊急避妊薬へのアクセスの問題は、両輪で推進する必要がある」

要望書を受け取った政務官は、OTC化について「環境整備も含め、前向きに進めていく。検討の場においても当事者の声を含めた議論にしていきたい」と応じたという。染矢さんは「クリアすべき課題はあるが、薬局販売によって救われる多くの方がいると思う」と話した。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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