2019年07月13日 09時36分

コンビニオーナー「最賃アップ」に戦々恐々 本部との「利益配分」見直しは急務

園田昌也 園田昌也
コンビニオーナー「最賃アップ」に戦々恐々 本部との「利益配分」見直しは急務
売上は頭打ちな一方で、最低賃金は高騰している

厚労省で例年通り「最低賃金の見直し」が7月4日から始まっている。まずは中央の審議会で議論し、示された目安をもとに地方の審議会で各地の事情を反映させる。

最賃については、2016年6月に閣議決定された「ニッポン1億総活躍プラン」で年3%程度をめどとする引き上げ方針が示されており、近年はその通りに推移している。

仮に今年も3%アップなら、全国加重平均は874円だから、今秋には900円前後になるとみられる。

最賃の推移 最賃の推移

こうした中、苦境に立たされそうな業種の1つが、24時間営業などの問題で揺れるコンビニ業界だ。

●コンビニバイトは最賃引き上げの影響受けやすい

コンビニの時給は最賃近くに設定されていることが多く、引き上げの影響を受けやすい。

リクルートジョブズの調査によると、三大都市圏でアルバイトやパートを募集するときの平均賃金は1051円。一方、コンビニに限定すると980円で50超ある調査対象のうち下から2番目となっている(2019年5月度)。

ちなみに2018年度の最賃はそれぞれ、東京985円、大阪936円、名古屋(愛知)898円だ。

三大都市圏の職種別平均時給ワースト3(募集時:2019年5月度) 三大都市圏の職種別平均時給ワースト3(募集時:2019年5月度)

同調査の前年同期(2018年5月度)をみてみると、コンビニスタッフの募集平均は952円。最賃の上昇などを受けて、1年間で28円上昇していることになる。

●最賃の上昇がオーナーの収入を圧迫、有休義務化の影響も

24時間、年中無休のコンビニは他業種に比べ、人件費がかかる。たとえば、常時スタッフ2人配置で考えると、時給が5円上がるだけでも人件費は年間9万円強アップする。

今秋の最賃改定で東京が3%アップすれば、最賃は29円上がる。単純に時給29円アップと考えれば、年換算で50万円ほどの経費増になる計算だ。

時給アップ額と人件費の関係 時給アップ額と人件費の関係

さらに今年4月から「有給休暇の取得義務化」(5日間)が始まっている。社員として雇っているスタッフはもちろん、シフト次第ではアルバイトやパートも対象になるため、人件費はさらに増える。

●この5年でオーナーの収入激減、シフトに入るのも限界

最賃の全国加重平均はこの5年で110円引き上げられた(2013年度:764円→2018年度:874円)。先のリクルートジョブズ調査でも、コンビニの募集金額は5年前の同期比で101円上がっている(2014年5月:879円→2019年5月:980円)。

仮に時給100円アップで考えると、単純計算で5年ほどの間に人件費が約190万円増えたことになる。一方、コンビニの平均日販は頭打ちとなっており、オーナーの収入は減少傾向にあるとされる。

最賃と平均日販の推移 最賃と平均日販の推移

実際、経産省がオーナーを対象に実施した「コンビニ調査2018」では、半数のオーナーが過去数年とくらべて、売上が減ったと回答。店舗経営で不安に感じることとして、人件費の上昇(81.7%)、人手不足(78.5%)をあげている。

経産省「コンビニ調査 2018 結果」より 経産省「コンビニ調査 2018 結果」8pより。n=11,307。下線は編集部

現実的には、収入減に手をこまねいているわけにはいかないから、スタッフを減らして「ワンオペ」にしたり、オーナー家族がシフトに入る時間を増やしたりして対応することが多いとみられる。しかし、それにも限界はある。

経産省の調査では、「加盟していることに満足しているか」という問いに対し、「満足している」が69%から53%に減少。「満足していない」は17%から39%に上昇した。

4年でオーナーの満足度が下がった 経産省「コンビニ調査 2018 結果概要」3pより

●本部はロイヤルティーの見直しに消極的

コンビニ大手も加盟店に対する支援策をしてこなかったわけではない。しかし、利益配分の見直しには消極的だった。唯一、セブンイレブンが2017年にロイヤルティー(チャージ)を1%減額しただけだ。

ただし、これについては最賃の上昇だけでなく、勤務管理システムで店員の労働時間を15分単位で切り捨てていたとして、2016年8月に行政指導を受けた影響もあったとみられる。本当なら1分単位の支払いが必要だ。

今年2月以降、コンビニ大手は経産省の要請などもあり、加盟店支援策(行動計画)の策定を迫られている。しかし、本部業績に与える影響が大きいロイヤルティーの引き下げには各社、依然として慎重な立場だ。

たとえば、24時間営業に月10万円の補助金を出しているファミリーマートでは、最賃の引き上げにあわせて、毎年の金額改定を明記した。それでも今年は月3000円(最低賃金のアップ率が3%だったため)増えただけにとどまっている。

ファミリーマートの行動計画より ファミリーマートの「行動計画」(https://www.family.co.jp/company/news_releases/2019/20190425_01.html)より。赤枠は編集部

●最賃は当分上がる ロイヤルティー減額は不可避

7月21日投開票の参院選でも、最賃の引き上げを訴えている党は多い。野党では数年のうちに時給1300円や1500円という目標が掲げられている。

政権与党の自民党も、年3%ほどのアップを継続し、全国加重平均1000円を目指す方針だ。党内には今年、最低賃金の全国一律化を検討する議連までできた。景気がよほど落ち込まない限り、程度の差はあれ、最賃の上昇は当分続くとみられる。

こうした背景もあってか、今年6月から始まった経産省の「新たなコンビニのあり方検討会」では、複数の識者から利益配分の見直しについての言及があった。

急速な無人化ができない以上、ロイヤルティーの減額はもはや不可避といえるだろう。仮にできないのであれば、違約金をとらないなど、加盟店との円満な解約を進めていく必要がある。

今年、近隣に同じチェーンの新店を出され、日販が10万円前後減ったという東日本のオーナーは嘆く。

「ドミナント(集中出店)で減った売上を、シフトに入ってカバーするのは無理。今でも何日もシフトに入り、過労死レベルで働いているのに、さらに人件費が上がるなんて…。加盟店の努力だけで、毎年の人件費上昇分を補うのは不可能、もう限界ですよ」

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