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パンプス、ヒール強制の職場でケガしたら「労災」になる? #KuToo
石川優実さん(2019年6月3日、弁護士ドットコム撮影、東京都)

パンプス、ヒール強制の職場でケガしたら「労災」になる? #KuToo

女優でライターの石川優実さんの呼びかけで始まった「#KuToo」運動。職場でのパンプスやハイヒールの着用義務をなくし、履く履かないを選べるようにしようというものです。

根本匠厚生労働相は6月5日、パンプスなどの着用を義務付けることについて、「社会通念に照らして業務上、必要で相当な範囲」であるかどうかがポイントだと述べました(衆院厚生労働委員会)。

パンプスやハイヒールは「フォーマルな靴」として、接客業などで着用が義務づけられることがあります。その一方で、足を痛めるなど、健康被害が及ぶことも。

根本大臣は労働安全衛生上、腰痛や転倒事故への配慮はあるべきとし、足を怪我した労働者への着用指示はパワハラになりうるとも答弁しました。

では、もしパンプスなどの着用が義務付けられている職場で、転んでけがをしたり、外反母趾などになったりしたら、労災は認定されるのでしょうか。市橋耕太弁護士に聞きました。

●転んでケガは労災と認められる余地大きい

ーー靴が指定されている職場で、靴が原因で外反母趾になったり、転んでけがをしたりした場合、労災は認定されるのでしょうか?

「労災として認められるには、業務起因性、すなわち労働者に生じた傷病等が業務に内在する危険が現実化したものであると認められることが必要です。

パンプスなどの着用が義務づけられている場合に、例えば床がすべりやすいとか足場が不安定な現場での就業であるにもかかわらず靴を履き替えさせず、そのために転んでしまい怪我をしたような場合は労災として認められる可能性が高いと思います。

他方で、外反母趾が労災であると認められるには、就業の際のパンプス等の着用によって外反母趾になったことが認められないといけません。外反母趾になる原因は他にもあり得るため、定型的な判断をされがちな労災認定を得ることは容易ではないかもしれません。

もっとも、パンプス等の着用によって足を痛め、そのことを使用者に伝えていたにもかかわらず、それでも着用を義務づけられたために外反母趾になってしまったような場合には、使用者に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をすることも考えられます」

●外反母趾の証明、どうしたら良い?

ーー仮に仕事の靴で足を痛めたときは、会社側にそのことを伝えておくことが大切ということですね。労災を申請するとして、どういう風にしたら、業務が原因だと証明できるでしょうか。

「いずれにしても、パンプス等の着用によって外反母趾になったことを立証するためには、外反母趾になるその他の原因が乏しいことを主張することになります。例えば、仕事以外でどのような靴を着用していたかなどの事情が重要になってくると思います。

使用者の安全配慮義務違反を追及する際には、足を痛めていたことを使用者に伝えていたなどの事情も主張すべきでしょう」

ーー企業に服装や靴を指定する権利があるとしても、「痛い」と言う労働者にまで強制すると、手痛い目にあう可能性がありそうです。仮に靴指定を残すとしても、労働者の声には敏感であってほしいところです。

プロフィール

市橋 耕太
市橋 耕太(いちはし こうた)弁護士 旬報法律事務所
日本労働弁護団事務局次長。ブラック企業被害対策弁護団副事務局長。労働事件・労働問題について労働者側の立場で取り組む。大学等で授業を行うなど、ワークルールの普及にも精力的に活動している。

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