関東圏の大手フィットネスクラブ内でエステサロンを経営する「スイート・ピア」 (本社・東京都渋谷区、高田知美代表取締役)で、過労死ラインを超える長期労働があったにもかかわらず、残業代が未払いであるなどとして、元社員の20代女性2人が同社を相手取り、賃金合計約500万円の支払いなどを求める労働審判を8月20日、東京地裁に申し立てた。
申立人の女性2人と代理人の指宿昭一弁護士らは同日、厚労省記者クラブで記者会見し、過酷な労働実態に加え、店長から人種差別的なパワハラがあったことを訴えた。申立人の1人で、ルーツがネパールというAさんによると、店長から「Aはハーフで日本語が片言だから、名前もカタカナがいいよ」と言われ、勝手に無関係の「クリスティーナ」という名札を作成されそうになったという。Aさんは、「意味不明で許せなかった」と涙をにじませた。
●「自分が働いた分のお給料をもらえないのがわからない」
申立書などによると、申立人2人は2015年、スイート・ピアに入社。「実働平均8時間」「月給22万円ー32万円」という求人広告にひかれて入社したが、実際には過労死ラインである月80時間を超える残業があるなど、長時間労働だったうえ、残業代が一切支払われていなかった。2人は退職したが、スイート・ピア側は固定残業代だとして、残業代の支払いなどを拒否したため、今回の申し立てに踏み切った。
また、月に1回、日曜日は閉店後に他店との合同会議に強制参加させられたが、交通費は支払われていないという。2017年4月までは、「他店リサーチ」として、従業員が他のエステサロンへ出向いて自費で施術を受け、レポートを作成することも強要されていた。これらの未払い分も求めている。
●女性店長「あなたはハーフだからわからない」
さらに、Aさんはパワハラによる謝罪も求めている。申立書によると、Aさんは在籍していた店舗で2016年7月に店長となった女性から、「あなたはハーフだからわからないだろうけど日本人は…」「日本では…こういうものだ」などという発言を日常的に受けていた。
また、2016年9月には、店長はAさんが仕事中に話すのを笑い、「Aは片言だから、名札もカタカナにしたらいい。そのほうがお客様も外国の人だとわかりやすい」と発言。「クリスティーナ」という本名とまったく無関係の名札に変更するよう言われたり、「クリスティーナ ミキティー」と書かれたバースデーカードを渡されたりした。
Aさんが店長に「なぜクリスティーナなのか」と聞くと、店長は「なんとなくそれがいいから」と答えたという。会見でAさんは、涙で言葉を詰まらせながら、「このときは、精神的に弱っていたので、何が正しいか考えられない状態でした。退職届も受け付けてもらえず、体調不良になって適応障害になった。自分が働いた分のお給料をもらえないのもわからないし、最後まで戦いたいと思います」と語った。
2人が加盟する労働組合エステ・ユニオンは「いまだエステ業界では、固定残業代制度を使っている企業が多く、残業代不払いが蔓延している」と強く批判した。弁護士ドットコムニュースが同日、スイート・ピアに取材を申し込んだところ、「担当者が不在なのでノーコメントとさせていただきます」という返答だった。追記:パワハラの内容について、一部誤りがありましたので、訂正してお詫びいたします(2018年8月21日13時)