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2018年05月06日 09時32分

退職前に転職先で働く「二重在籍」法的に問題なし 有給買取、社会保険も交渉しよう

退職前に転職先で働く「二重在籍」法的に問題なし 有給買取、社会保険も交渉しよう
画像はイメージです(poosan / PIXTA)

転職の内定をもらった都内の男性サラリーマンHさん(30代)。これから今勤めている会社に退職の話を切り出そうと思っています。

Hさんの希望は、限度までたまった40日の有給休暇を消化すること。ただし、引き継ぎなどを考えると、全部消化しきる前に、新しい会社の入社日が来てしまいます。

有給消化ができないまま転職ということは珍しくありません。有給を買い取ってもらったり、新旧職場の「二重在籍」という形で完全消化することはできるのでしょうか。村松由紀子弁護士に聞きました。

●社会保険の処理が面倒、会社をうまく説得して

ーー退職する際、有給の完全消化を要求できますか?

できます。会社は労働者の有給休暇の取得日について、業務に支障が生じる場合には、「時季変更権」により、取得日の変更を指示することができます。

しかし、Hさんのように退職前で、他に有給を取得できる日がない場合に、時季の変更を指示することは、実質的に取得の拒否にあたります。

そのため、会社は退職時に未消化となっている有給については、変更を指示することはできず、そのまま取得を認める必要があります。

ーー現実的には「完全消化」しようとしたら、「二重在籍」にならざるを得ないことが多いと思います。そんなことできるんでしょうか?

有給消化中に転職先に入社することは法律上可能です。仮に会社の就業規則で「兼業」が禁止されていても、このような例外的な期間についてまで、会社が禁じる合理性は認められにくいでしょう。

ただ、二重在籍が例外的な取り扱いであることは事実なので、新旧両会社が嫌がる可能性は否定できません。

特に問題になるのは保険関係です。たとえば、健康保険・年金は二重在籍を認めていますが、雇用保険は1社のみの加入なので、通常は、新会社の資格取得時期を遅らせることになるでしょう。在籍中に旧会社が「資格喪失」を届け出ると、賃金台帳などと齟齬が生じ、職安(公共職業安定所)から指摘を受ける可能性があるためです。

また、二重に在籍することにより、本人にとっても、その期間の社会保険料が高くなるというデメリットが起こりえます。そうした事態を防ぐためには、新しい会社に二重在籍の月だけ、アルバイトにしてもらうなどして、社会保険に加入しなくても良いように調整してもらうことも、考えられます。

ーー二重在籍は手続きが煩雑なのですね。ならば、有給を買い取ってもらうのはどうでしょう?

有給の買取りは、一般的には認められていません(労働基準法第39条)。有給取得の妨げとなる可能性があるためです。

ただし、退職時に消化しきれない分や、時効消滅した分などについては、そのような弊害が無いため、例外として買取りが認められています。とはいえ、会社が買取る「義務」まではありません。

ーーいずれにしても、新旧会社との話し合いになるということですね

二重在籍が法律上、可能であることを知らない会社もあると思いますので、二重在籍が可能であることを、新旧会社に説明して下さい。新会社が、保険手続等において、柔軟に対応してくれるなら、有給を完全に消化することが出来ます。

旧会社が、二重在籍状態になることに難色を示した場合は、二重在籍となる日数分の有給休暇の買取りを求めてみてはいかがでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍するほか、社会保険労務士3名、行政書士1名が所属。交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題から企業法務まで幅広く扱う。
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