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職場PCでの「私的なやりとり」、会社の閲覧リスクと隣り合わせ…「見ないで」と言える?
写真はイメージです(EKAKI / PIXTA)

職場PCでの「私的なやりとり」、会社の閲覧リスクと隣り合わせ…「見ないで」と言える?

ひと昔前には想像できなかったことですが、いまでは職場のスタッフ一人ひとりに業務用パソコンがあてがわれるのがほとんど当たり前の光景と言っていいでしょう。本来業務に使う合間に、ついつい、私用のメールをしたり調べ物をしたりということもあると思います。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、「退社後に部下が承諾もなく勝手にパソコン(会社貸与)を見たことが判明した」との声が寄せられました。この相談者は、もともと職場のパソコンということもあり、パスワードをかけていなかったそうです。プライバシー侵害にあたると考え、懲戒解雇など何らかの措置を望んでいるようでした。

実際、何の断りもなく中身を見られるのは気持ちいいものではありません。ただ職場から貸与されたパソコンについて、「勝手に見るな」と言い切れるものなのでしょうか。田村優介弁護士に聞きました。

●職務の遂行上必要な目的があるかどうか

ーー勝手に見られるというのは会社のパソコンであっても気分がいいものではありません

「部下が何の目的で上司のパソコンを開いたのかが問題です。業務上必要なファイルを取り出す、必要な設定を行う、など、職務の遂行上必要な目的があるのであれば、会社所有のパソコンを別の社員等が開くことには正当な理由があり、問題にはならないといえます。

これに対し、業務上の必要なく、プライバシーを覗き見したいといった動機から他の社員のパソコンを開いて中を見ることは、職場における規律違反、職場環境を悪化させる行為、などとして、処分の対象になることもありえると考えられます」

ーー他の手段でデータを閲覧される場合はいかがでしょうか

「今回は物理的なパソコンそのものに関してでしたが、電子メールやWebサイトの閲覧履歴等は、会社のサーバー等からでも事後的にデータにアクセスすることが可能であることが多く、そのデータの閲覧についても、上記と同様の議論が妥当するでしょう。

また、いち社員ではなく、会社側が組織として社員のメール等を閲覧することが適法か否かについては、会社の施設管理権と個人のプライバシーとの関係から難しい問題がありますが、個人としては、会社はその気になれば通信内容などを取得することは容易に可能であることを前提に行動するのが無難であるといえます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

田村 優介
田村 優介(たむら ゆうすけ)弁護士 城北法律事務所
ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団。残業代請求、不当解雇、パワハラなど、労働問題を多く手がける。共著「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」など。

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