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タクシー「実質残業代ゼロ」制度、原告逆転敗訴…裁判所「長時間労働を抑止」と評価
指宿弁護士(左)

タクシー「実質残業代ゼロ」制度、原告逆転敗訴…裁判所「長時間労働を抑止」と評価

タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)のドライバー14人が、実質的に残業代が払われない賃金規則は無効だとして、未払い賃金を求めていた訴訟(第1陣)の差し戻し審判決が2月15日、東京高裁(都築政則裁判長)であった。ドライバーが逆転敗訴した。

ドライバーたちには名目上、残業代が支払われていたが、「歩合給」から割増賃金や交通費相当額が引かれる仕組みだったため、「実質残業代ゼロだ」と無効を主張していた。現在、この制度は改められている。

ドライバー側代理人の指宿昭一弁護士は、「この手を使えば、タクシー業界にかかわらず、残業代を払わなくても良くなってしまう」と警鐘を鳴らし、即日上告したことを明かした。

●「労働効率性」を高める仕組みとして合理性があると判断

判決のキーワードは「成果主義」と「労働効率性」だ。

判決は、歩合給から割増賃金(=時間給)を引くのは、従業員に「労働効率性」を意識させ、残業を抑止する効果があると判断。合理性があり、残業代の支払いを免れる意図でつくった制度ではないと認定した。

また、労働基準法37条は、通常賃金と割増賃金の違いをはっきりさせること(明確区分性)を求めている。裁判では、残業時間によって変動する歩合給は、明確区分性を欠くのではないかが争点になっていた。

この点について、判決は、歩合給が残業代のように労働時間によって変動するとしても、「成果主義的」な報酬として、通常賃金であることには変わらないと判断。その上で、名目上の残業代が、法定の金額を下回っていないことから、国際自動車の賃金規定を有効と判断した。

●ドライバー「裁判所は、業界の働き方をまったく理解していない」

判決を受けて、訴えたドライバーの1人は「裁判所は、タクシー業界の働き方をまったく理解していない」と憤りを隠さなかった。

「裁判所は『労働効率性』と言いますが、ドライバーはお客様を選べません。早く帰ろうと思っても、『回送』にする前にお客様がいたら断れない。乗車拒否として、処罰されてしまいます(道路運送法13条)」

●1月18日にも同種の裁判でドライバー敗訴

裁判の流れ

この訴訟の一審・二審は、労基法37条の趣旨に反し、公序良俗違反で賃金規定を無効だと判断。ドライバー側が勝訴した。その後、最高裁が「当然に…公序良俗に反し、無効であると解することはできない」として、高裁に差し戻していた。

国際自動車では、同種の訴訟が計4つあり、1月18日には東京高裁で第2陣のドライバーも敗訴、上告している。

(弁護士ドットコムニュース)

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