祖父が急死したので忌引休暇を申請したら、他のスタッフが有給で旅行に行くから休むな、と却下されたーー。インターネットのQ&Aサイトにそんな書き込みが投稿された。
投稿者によると、勤務前日の朝、投稿者の母方の祖父が急死した。翌日に通夜、その翌日には告別式が行われるため、慌てて会社に忌引休暇を申し出た。しかし、「他のスタッフ数名が有給で旅行に出るから休むな。一周忌や四十九日で法要すればいいだろう」と言われたという。
投稿者が就業規則を確認したところ、「身内であれ、冠婚葬祭を理由に勤務日を変えること、休暇を取得することを禁ず」と書かれていたそうだ。
忌引き休暇の申請を却下した会社側の対応や、就業規則の内容に法的な問題はないのだろうか。大山弘通弁護士に聞いた。
●「忌引き休暇」は、法律上当然に認められているものではない
「まず、前提として『忌引き休暇』というものは、法律上当然に認められているものではありません。ただし、就業規則に忌引き休暇が定められていれば、労働者はその会社との関係で忌引き休暇を取る権利が認められており、権利を行使することができます」
大山弁護士はこのように述べる。今回の場合はどう考えられるのか。
「投稿者の方の場合は、会社の就業規則で『身内であれ、冠婚葬祭を理由に勤務日を変えること、休暇を取得することを禁ず』となっているため、就業規則上の忌引き休暇は認められていないことになります。残念ながら、忌引き休暇の申請を認めなかった会社側の対応に、問題はありません」
投稿者が祖父の葬儀に出る方法はないのだろうか。
「年次有給休暇を取得したらよいでしょう。年次有給休暇は、どのような理由でも取得できます。取得する際は、労働者から使用者へ、その旨を伝えればOKです(通常は申請という形をとります)。
労働者の年次有給休暇の取得の申請に対して、会社が、この時期に休まれてはと困ると、有給を取得する日時を変更してくれないかと持ちかける場合もあります(時季変更権の行使)。しかし、時季変更権が正当化されるのは『事業の正常な運営が妨げられる場合』(労働基準法39条5項)です。
具体的には、その労働者が業務の運営に不可欠で、かつ、代替要員を確保するのが困難な場合に限られるため、時季変更権が正当化される場面は通常考えにくいです。
今回の場合、他のスタッフがすでに休みを取っているということで、時季変更権が正当化されるかどうかは微妙なところですが、恐らく、年次有給休暇の取得は認められるでしょう。
なお『身内であれ、冠婚葬祭を理由に勤務日を変えること、休暇を取得することを禁ず』という就業規則の定めがあることによって、当然に、年次有給休暇を取得できなかったり、時季変更権が正当化されたりするわけではありません」