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会社分割で子会社に移籍したら工場閉鎖、解雇…化粧品会社・元従業員の復帰認める判決
元従業員の男性

会社分割で子会社に移籍したら工場閉鎖、解雇…化粧品会社・元従業員の復帰認める判決

化粧品会社「エイボン」の工場で働いていた元従業員、岩澤紀緑さん(54)が、工場の子会社化後の解散にともなって解雇されたことをめぐり、エイボンに対して、地位確認と未払い賃金の支払いなどを求めていた訴訟の判決が3月28日、東京地裁であった。湯川克彦裁判長は、エイボンが会社分割の際に労働者と協議しなかったとして、岩澤さんが労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、未払い賃金の支払いを命じた。

この日の判決後、岩澤さんは、東京・霞が関の司法記者クラブで会見をおこなった。岩澤さんは「本当にうれしい」「解雇には、悔しさと悲しさがあった。会社が好きだったので、まだ職場にいたい気持ちだった。不安もあるけれど、早く職場に復帰したい」と喜びを語った。

判決文などによると、岩澤さんが勤務していたエイボンの厚木工場は2012年7月、同社の100%子会社として分社化された。会社側から「労働条件に変更はない」などと伝えられ、岩澤さんも子会社にうつっていたが、それから1年半後の2014年1月、エイボンは子会社を解散し、工場を閉鎖した。それにともなって解雇されたため、岩澤さんは2015年、地位確認を求めて提訴していた。

●「会社分割にともなって、きちんとした協議がされるようになる」

岩澤さんの代理人をつとめた岡部玲子弁護士によると、法律改正によって、会社分割が認められたあと、景気の良くない部門を切り離し、会社がやめさせたい労働者を集めて放り出すという危惧があったという。会社分割にともなう労働者の承継については、最高裁判決が2010年、新会社で承継する労働者について、一人ひとりと十分な協議を尽くさないといけないという基準を示していた。

岡部弁護士はこの日の会見で「今回は、最高裁の基準が適用されて、労働者が救済された初めて判決だ」と説明。「会社分割の際、きちんと協議されることで、労働者が疑問点をぶつけたり、会社もいい加減なごまかしができなくなる。そういう良い面がでてくることになると思う」と判決の意義を語った。

エイボンのCSR広報部は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「正式な判決文を受け取っていないので、コメントを差し控えさせていただきます」と回答した。

(弁護士ドットコムニュース)

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