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2017年03月20日 10時30分

契約社員など「無期転換」ルールで「雇い止め」増加懸念…どう対応したらいい?

契約社員など「無期転換」ルールで「雇い止め」増加懸念…どう対応したらいい?
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来年4月から、パートや契約社員など、契約期間が決まっている「有期雇用者」の大規模な「無期転換」が始まる。2013年4月に改正された労働契約法により、同じ会社で5年超働いている場合、本人の希望があれば、無期契約に転換しなければならないからだ。

そこで危惧されるのが、雇用責任が重くなるのを嫌い、企業による「雇い止め」が増えないかという問題だ。労働問題にくわしい弁護士によると、「5年」を理由にした雇い止めはできないため、今春以降、契約更新で労働者が不利な契約を結ばされる可能性があるという。

一体、どういう手口が考えられるのだろうか。また、労働者はどう対応したら良いのだろうか。笠置裕亮弁護士に聞いた。

●無期転換は必ずしも「正社員化」ではないが、雇い止めを恐れなくて済む

無期転換ルールは、法律が施行された2013年4月1日以降の契約から、5年のカウントが始まります。1回の契約期間や更新時期がいつなのかによりますが、来年2018年4月1日以降の更新後、この法律による無期転換ルールが適用される方が出てくることになります。

無期転換を希望する場合は、適用対象となった後、使用者に申込む必要があります。後でトラブルにならないよう、内容証明郵便など、記録に残る形で申込みをすることが望ましいでしょう。

――無期転換すると、どんなメリットがある?

無期契約に転換することは、必ずしも正社員になることを意味するわけではありません。企業によっては、労働条件はそのままで「無期」の契約社員になるような場合もあるからです。

しかし、契約更新の度に、いつ雇い止めをされてしまうか不安を抱えている有期契約の労働者は少なくありません。無期契約に変われば、仮に正社員ではなくても、その心配をする必要がなくなります。

雇い止めを恐れ、セクハラやパワハラを受けても我慢していた、過重労働を受け入れていた、産休育休をとらなかったなどといった相談を、私は数多く耳にします。実際、2008年のリーマンショックの直後には、真っ先に数多くの有期契約労働者が雇い止めに遭い、大きな社会問題にもなりました。

雇い止めがおかしいとして裁判を起こしたとしても、無期契約労働者と比べ、救済されるハードルはとても高いのが現状です。本当に不安定な立場と言わざるを得ません。その意味では、無期契約に変わることで、当たり前の権利も主張しやすくなるでしょう。その後、徐々に正社員との待遇改善を進めていくことも、労働契約法の制度設計上予定されています。無期転換ルールとは、まさに正社員化に向けた大きな一歩なのです。

●急に「更新回数の上限」ができたら注意

――企業は雇い止めのために、どんな方法をとってくる?

労働者を無期に転換することは、企業にとってもメリットがあります。人手不足が叫ばれる中、良い人材を確保したい企業、労働者の就労意欲に目を向けた企業が、積極的に無期転換ルールを評価しています。中には、法律の定める5年を超える前に導入している企業も数多く存在します。

ところが一方では、無期転換の適用を免れようとする悪質な使用者の存在が問題になっています。最近報道された事案だと、「消防試験研究センター」が無期転換ルールの適用を免れる目的で雇い止め予告をしていたことが分かりました。東京労働局が今年2月に指導し、センターが雇い止めを撤回しています。

企業が採用する際には、「契約上は1年となっているが、長く勤めてくれる方を求めている」などと言って、優秀な人材を募集するのが通常です。消防試験研究センターの事案でも、まさにそのような勧誘が行われた上で、複数回の契約更新がなされていました。

このような場合には、契約更新がなされることに対する「合理的な期待」があると判断されるのが通常です。契約更新への合理的な期待がある場合には、「客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当」と認められなければ、雇い止めは有効とはなりません(労働契約法19条)。

消防試験研究センターが行った雇い止めは、無期転換ルールを制定した意味が無くなってしまうため、客観的に合理的な理由を欠き、違法となるのです。

今後、使用者によっては、5年の到来時(2018年4月)の前に、雇い止めを仕掛けてくる例が頻発すると思われます。消防試験研究センターのように、急に更新回数の上限をつくるというのは、無期転換ルールの適用を免れるための代表的な脱法手段のひとつと言えるでしょう。

――有期契約の労働者は、何に注意したらよい?

使用者は、無期転換を避けるため、という本当の目的を隠しながら、あの手この手で巧みに雇い止めを仕掛けてくるでしょう。契約内容に更新回数に上限がないかなどを契約更新の度に確認し、安易に承諾をしないことが重要です。

雇い止めの予告を受けたり、実際に雇い止めに遭ってしまったりした場合には、まず労働問題に詳しい専門家にご相談いただき、法律に沿った対応をきちんと取っていく必要があるでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

笠置 裕亮弁護士
開成高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒。日本労働弁護団本部事務局次長、同常任幹事。民事・刑事・家事事件に加え、働く人の権利を守るための取り組みを行っている。共著に「労働時間規制と過労死」(労働法律旬報1831・32号61頁)、「労働相談実践マニュアルVer.7」「働く人のための労働時間マニュアルVer.2」(日本労働弁護団)。
所在エリア:
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事務所名:横浜法律事務所
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