無料でチャットや通話ができる「LINE」は、スマホユーザーの定番アプリとなっている。国内の登録ユーザーは4500万人を突破。これを業務連絡に活用する会社も増え始めた。
LINEは24時間気軽にメッセージのやりとりができ、会議形式でのチャットも可能。ビジネスツールとしても便利だ。だが、この手軽さが連絡過多を招き、ストレスを招く可能性もある。
ジャストシステムが大学生に行ったアンケートでは、「LINEのトーク利用で疲れを感じることがある」という項目に対して、46%が「あてはまる」か「ややあてはまる」と答えている。また、「既読が相手にわかるので返事をしなければ悪いと思ってしまう」という項目では、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人が71%もいた。
これは学生のアンケート結果だが、社会人で対話相手が職場の上司だったとしたら、なおさら、このようなストレスを感じるのではないか。もし、昼も夜も、上司からLINEのメッセージが送られてきて、部下が苦痛に感じるほどだった場合、それは「パワハラ」といってもよいのではないだろうか。労働問題にくわしい菊池麻由子弁護士に話を聞いた。
●パワハラになるかどうかは使い方しだい
――そもそも、会社の業務連絡にLINEを使うことに問題はあるか?
「会社が業務でのLINEの使用を認めている限り、上司がLINEを使って、部下に必要な指示を行うことは、基本的に問題はありません。LINEによる指示が継続し、部下が苦痛に感じたとしても、業務上必要な指示である限り、パワハラとして違法性を問うことは困難でしょう」
――パワハラになることもあるのか?
「問題は、上司がLINEを利用して、業務に必要な範囲を超え、継続して部下の人格を侵害するメッセージを送り続けた場合です。このような人格侵害は、LINEによるものに限りませんが、LINEはその手軽さから、人格を侵害するような発言を助長することもあるでしょう。そのような場合には、パワハラに該当する可能性があります」
――企業がLINEを使う場合には、どういう点に注意すべきか?
「パワハラに該当し、さらにそれが違法行為と評価されるかどうかは、業務上の必要性やそのような行為を行った真の目的、部下の苦痛の程度などを考慮して検討されます。特に、夜や早朝などの業務時間外のLINEによる指示については、業務上の必要性などが厳しく検討されることになるでしょう。
いずれにせよ、業務連絡でのLINEの使用は、業務を円滑に進めることを目的としているのでしょうから、LINEの使用によって社員の人格を傷つけて苦痛を与えてしまうのであれば、逆効果です。LINEを業務連絡ツールとして使用する企業は、そのあたりも検証して、適切なLINEの使い方を従業員に周知する必要があるでしょう」
LINEに限ったことではないが、新しい情報ツールは便利な反面、使い方によってはパワハラなどの問題に発展する可能性もあるということだ。業務連絡ツールとして使用する場合は、「使い方」をしっかり検証・周知する必要があるのだろう。