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パート労働者、正規と「健康格差」…弁護士「健康診断の対象を広げるべき」
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パート労働者、正規と「健康格差」…弁護士「健康診断の対象を広げるべき」

パートタイム労働者と正規労働者との間に、賃金だけでなく健康面についても格差の現状があることを毎日新聞が報じ、議論を呼んだ。

毎日新聞がデータとして挙げたのは、厚労省が民間企業に委託して、パートタイム労働者1万3417人と5065事業所に聞いた2014年の調査結果だ。定期健康診断を「受診した」と答えた労働者は、従業員49人以下の事業所で57.9%、300人以上で82.2%だった。パートタイム労働者の健康管理規定が「ある」と答えた事業所は49人以下で53.1%、同300人以上で74.4%で、小規模な事業者ほど低い状況が明らかになった。

そもそも、企業側にパートタイム労働者の健康を適切に管理する義務はないのか。正規労働者と異なる取り扱いが許されるのか。労働問題に詳しい竹之内洋人弁護士に聞いた。

●正社員の4分の3以上の労働時間に限って義務付けられている

「労働安全衛生法は、企業に対して、常時雇用する労働者に年1回の定期健康診断を実施する義務を課しています。

この労働者には、正社員はもちろん、契約更新により1年以上勤務している非正規労働者も含まれます。

しかし、パートタイム労働者については、正社員の4分の3以上の所定労働時間(一般的には週30時間以上)となっている人に限って義務付けられています」

竹之内弁護士はこのように述べる。調査結果については、どう考えればいいのか。

「健康診断が義務付けられているパートタイム労働者が限定されていることからすれば、それなりに実施されているようにも見える調査結果です。

しかし、この調査に回答した労働者は、調査に協力した企業の労働者に限られています。法令を遵守している企業の労働者の割合が高いことが予想され、実際の実施率はもっと低いと思われます。

パート労働者であっても、健康管理の必要性はありますので、法令で義務付けられる対象者はより広げられるべきでしょう。

厚労省の通達上も、正社員の2分の1以上の労働時間のパートタイム労働者まで健康診断を行うことが、『義務ではないが望ましい』とされています。

事業所の規模が小さくなるほど実施率も十分ではなさそうですので、実施状況についての監督もきちんと行い、法の実効性を高めるべきだと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

竹之内 洋人
竹之内 洋人(たけのうち ひろと)弁護士 公園通り法律事務所
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員

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