暑い夏は、冷えたビールが美味さを増し、喉をうるおす。飲みたい衝動にかられても、流石に仕事中に飲酒することは「よくない」と自制する人がほとんどだろう。
しかし、ノンアルコールビールに手を出す人はいる。東京都内のIT企業で働くアカリさん(30代)の男性上司も、午後になるとプシュッと缶の蓋をあけ、グビグビ飲みながら「たまんね〜」と満足げにしている。冷ややかに見ていると「暑いんだから、これぐらい許してよ。そもそも酒じゃないし、合法でしょ」と言われたという。
就業規則で飲酒を禁止している会社もあるが、ノンアル飲料ならば許されるのか。山田長正弁護士に聞いた。
●「就業規則違反」になる可能性も…
ーーノンアルコール飲料を会社内で飲むことは就業規則違反となりうるのでしょうか。
外観や香りがビールそっくりのものであれば、他の社員へ悪影響を及ぼし、職場秩序や風紀を乱す可能性があります。また、社外からの来客があった際に会社の名誉・信用が失われたりする可能性もあります。よって、就業規則違反になる可能性はあります。
ーー会社側がノンアルコール飲料の摂取を禁止することはできるのでしょうか。
「職場秩序や風紀を乱す行為」「会社の名誉・信用毀損」という就業規則の抽象的な記載や、会社における「酒気帯び状態での勤務の禁止」という記載だけでは、就業規則違反の有無について争いが生じる可能性があります。そのため、ノンアルコール飲料を禁止する旨は具体的に就業規則に明記すべきです。
就業規則にノンアルコール飲料も禁止される具体的記載があれば、仕事中に飲むことは就業規則違反となります。
外観や香りがビール以外のチューハイやサワーであっても、これらにそっくりのものであれば、他の社員へ悪影響を及ぼし、職場秩序や風紀を乱したり、社外からの来客があった際に会社の名誉・信用が失われたりする可能性もあります。よって、就業規則違反になる可能性はあります。したがいまして、就業規則で禁止することも認められると考えます。
ーーノンアルコール飲料を具体的に禁止する記載がない場合はどうなるのでしょうか。
「職場秩序や風紀を乱す行為」や「会社の名誉・信用毀損」に当たるかが問題となります。
形式的には、これらの就業規則違反になる可能性はありますが、実際に他の社員への影響がなく職場秩序を乱していない場合や、第三者からのクレームがなく会社の名誉・信用を毀損していない場合等であれば、実質的には就業規則違反はないと評価されるべきです。
あるいは、仮に就業規則違反とされても、相当性を欠く等として、懲戒処分までは無効になるでしょう。