弁護士ドットコムが「夏休み」について会員の弁護士にアンケートをとったところ、301人が回答し、うち2割がカレンダー通りで夏休みはとらなかったと答えた。「業務多忙」などの意見が目立った。
一方で、土日祝日を除き、4日以上休んだという弁護士が半数を占めており、今年のカレンダーだと9連休以上となっている可能性がある。
また、夏休みをとるためのスケジュール調整の難易度を尋ねたところ、約3割が「難しい」「やや難しい」と答えたのに対し、約5割は「簡単」「やや簡単」と答えた。
柔軟に休みを設定できる自由度の高さと、替えがききづらく少人数で何でもこなさなくてはならない忙しさという、自営業の2つの性質を反映した結果と言えそうだ。
●小規模事務所は事務所ごと休業のケースも
アンケートは8月16日~22日まで実施。回答した301人の所属先の規模は次の通りで、1~2人事務所が半数を占めた。
・弁護士1人:33.6%
・弁護士2人:20.3%
・弁護士3~5人:22.6%
・弁護士6~10人:9.0%
・弁護士11人以上:13.0%
・企業内弁護士:1.7%
(小数点第二位を四捨五入しているため、必ずしも合計は100%にならない)
所属先に組織としての休業期間があるかを尋ねたところ、「ある」が54.5%で、ほぼ半々の結果となった。
ただし、所属規模別に見ると、1人事務所では66.0%に夏季休業があるのに対し、弁護士11人以上の事務所では17.5%しかなく、一定以上の規模になると事務所そのものを休みにするケースは少数になっている。
また、所属先に夏季休業期間があっても、自身の休みの日程とは異なると答えた弁護士が33.5%いた。
後述する自由記述には、「たまった仕事をさばける」といった意見も散見され、所属先が休みだからといって、必ずしも弁護士が休めるとは限らないようだ。
●休業期間は「8月11日~15日」の5日間が最多
また、所属先の夏季休業期間を尋ねたところ、8月11日(木・祝)~15日(月)までの5日間が22.3%で最多だった。次点は同16日(火)までの6日間で15.7%。以下、主なものを列記する。
・【5日間】8月11日(木・祝)~15日(月):22.3%
・【6日間】8月11日(木・祝)~16日(火):15.7%
・【4日間】8月13日(土)~16日(火):7.8%
・【3日間】8月13日(土)~15日(月):6.0%
・【5日間】8月12日(金)~16日(火):6.0%
・【7日間】8月10日(水)~16日(火):5.4%
2022年8月のカレンダー(macaron / PIXTA)
今年は8月11日(木)が祝日だったため、始期については12日(金)も休みにするかどうか、終期については15日(月)と16日(火)のどちらまでにするかで判断が分かれたようだ。なお、1件だけだったが、8月は全休という回答もあった。
●夏休み「カレンダー通り」が最多
土日祝を除いた夏休みの取得日数も尋ねた。もっとも多かったのは、カレンダー通り(0日)で21.3%だった。
休まなかった理由について尋ねると、「業務多忙」「作成しないといけない書面が多数ある」などのコメントが多く寄せられた。一方で、「暑いし、コロナが蔓延しているし、行くところがない」など、あえて「取らなかった」という回答もあった。
以下、取得日数別の回答割合。
・0日(カレンダー通り):21.3%
・1日:12.3%
・2日:14.0%
・3日:15.3%
・4日:7.6%
・5日:15.0%
・6日:5.0%
・7日:2.7%
・8日以上:5.0%
・未定:2.0%
休みの期間、主に何をしているかについては以下のような結果となった。
・旅行:28.3%
・自宅で過ごす:20.7%
・帰省:16.5%
・近場に出かける:16.0%
・休みだけど仕事:13.1%
・未定:3.0%
・その他:2.7%
夏休みのためのスケジュール調整の難易度については、簡単・やや簡単が50.1%、難しい・やや難しいが28.9%だった。全体的には簡単と感じる弁護士が多いようだが、扱っている業務内容によって二極化している面もありそうだ。
・簡単:28.2%
・やや簡単:21.9%
・どちらとも言えない:20.9%
・やや難しい:16.6%
・難しい:12.3%
●事務員の休みどうしてる?
事務員の夏休みについても聞いた。まずは事務員の数を尋ねたところ、次のような結果となった。
0人:9.9%
1人:29.3%
2人:19.0%
3~5人:23.1%
6~10人:8.5%
11人以上:10.2%
取得日数は以下の通り。当然ながら弁護士よりも全体的に休みが多い傾向にはあるが、事務所そのものが休むようなケースでない限り、長期の休みは難しそうだ。弁護士と違って、事務員は労働者であるため、年次有給休暇の取得を奨励する傾向もみられる。
・0日:9.8%
・1日:5.3%
・2日:14.3%
・3日:17.0%
・4日:10.2%
・5日:24.2%
・6日:6.4%
・7日:3.8%
・8日~:5.7%
・不明:1.1%
・その他:2.2%
●ほとばしる夏休みへの思い
最後に夏休みについて思うところを自由に書いてもらった。いくつか紹介したい。
<休みが取りづらい理由>
・裁判所がきちんと休みになれば、大手をふるって休めるので、裁判所も1週間くらい閉じればいいのに。
・裁判所や検察庁は自分たちが夏休みを取るからといってお盆期間に弁護士会に修習生をぶん投げないでほしい
・お盆休みのない顧問先が大きな比重を占めている場合には、組織として夏休みを設けることは難しいと思う。
・あまり休みすぎると休みの後の仕事の量が怖い
・長期の休暇をとりたいが、機会ロスが怖い。
・当番弁護士などの割当てもあります。
・手持ちに刑事事件(特に逮捕勾留中)があれば、面会に行くため夏休みは無いものと同じですので、その点は予定を組みにくいところはあります。
・お盆はクライアントが動いていないため、事務所をあける意義は薄いように思われるが、ボスの意向で営業することになっている。
・妻が事務員であるため、夏季休暇を取ろうという意識に欠け、世間が盆休みの時期に期日を入れてしまい、カレンダー通りの勤務になってしまうことが多い。
・少なくとも期日が1月前には入ってくることから相当前から予定を立てておかなくてはならず、また非常に強い気持ちでないと当初予定の維持が難しい(「この日は夏休みなので期日外してください」とはなかなか言いづらい)です。
<完全には休まらない>
・事務所事件は共同で受任しており、日頃から情報共有しているため、比較的引き継ぎが容易であるため休みを取るハードルは低いが、個人事件の関係があるので、休み中もメールチェックは行っているし必要があれば対応している。
・お盆休みは取りやすい。それ以外についても、自由業なので自分が休みと決めれば休みが取れるが、依頼者との関係もあり、長期間の休みは取りづらい。
・帰省、旅行先でも仕事対応求められ心穏やかに休めませんでした。予め休みである旨、対応が遅くなる旨周知していましたが、意味のあるものではなかったようです。
<弁護士の立場による違い>
・事務所にいた頃は休みをとりづらい雰囲気だったが、今はインハウスなので何の遠慮もなしに有給が取れる。
・アソ時代は仕事をほっぽり出して遊べるという異常な解放感があったが、独立してからはそんな気持ちは微塵もなくなり、夏季休暇の喜びというものは失われてしまった。
・自営業なので、結局休みにする勇気を持てるかどうか。
・事務所の経営を始めた後は基本的に完全な休みはほとんどなく、何かしらの仕事や執筆などをしているため、夏休み期間だからどうという意識は無くなりました。
・他の事務所の先生がお盆休み期間中ということで、相談が集中する傾向にある。お盆休み期間を外して夏休みが取れるようにしたい。
<お盆に休まなくても良い>
・顧問先や取引先に夏休みがないので、当事務所も事務所としての休みは設けず、交代で休みを取る形にしています。お盆に休むよりも、ずらして休みを取ることにより、旅行の費用を安く抑えることができて、助かっています。
・ヨーロッパのようにひと月とる、というならまだしも、敢えて人が集中して移動に費用もかかる期間に揃えて休む必要はないものの、クライアントが休みになって連絡がこないため、むしろ、この時期に事務所で仕事をしている方が捗るようには思います。
<事務員との関係>
・有休を取ろうとしないので、休ませてあげたい。
・事務員のことを考えると長い休みが好ましいが、依頼者の不便もあり、また、休みが多いとその後の対処がその分大変となるので、一概に長ければよいというものでもない。毎年試行錯誤である。
・コロナの時期ですので事務局もとても気を遣って、一人は午前中か午後のどちらかをリモートにしていますし、臨機応変に対応しています。
<業界の風潮>
・事務所がどうというよりも、弁護士は土日も盆正月も実際は仕事をしているという業界の風潮が無くなるといいなと思っています。弁護団や弁護士会の委員会などで、いまだに、お盆直前に「3日以内」とか「お盆中に完了すること」というような仕事がバンバンMLで指示されるのも良くないなと思います。
・働き方改革が進む中、夏休みを始め長期の休暇が非常に少ない業界であると感じる。
・GWもなく、お盆位は組織として休日にしてほしいというのは本音です。