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飲み会でコロナに感染したら、職場で減給処分された! 弁護士「違法な懲戒処分の可能性」
画像はイメージです(Taka / PIXTA)

飲み会でコロナに感染したら、職場で減給処分された! 弁護士「違法な懲戒処分の可能性」

感染者の増加が懸念されている新型コロナウイルス。コロナ感染により職場で懲戒処分を受けたという女性が、「違法性はないのか」と弁護士ドットコムに相談を寄せています。

【相談】

私はホテル関係の職場に勤めています。新型コロナウイルスに感染したことで、職場から注意と半年間の減給処分を受けました。

2人で飲みに行き、2人とも感染しました。職場では飲みに行くことを制限されてはいませんでした。業務で数百名の食事の準備もするので、潜伏期間などを考慮すると、どこで感染したか分かりません。

職場復帰したところ、「軽率な行動をしていた」として半年間で8000円の減給処分を言い渡されました。

今後についても、プライベートでの外出を制限されています。ホテルの営業にも支障は出ていませんが、懲戒処分は違法ではないのでしょうか。

●「違法な懲戒処分」(回答・山田長正弁護士)

今回のケースでは、プライベートで「軽率な行動をしていた」として、新型コロナに感染したことを理由に、懲戒処分がなされたケースかと思いますが、結論的には違法であると考えます。これから理由となるポイントを3点あげます。

●(1)そもそも、プライベートで感染したか不明

新型コロナはどんなに注意していても感染する可能性があり、感染経路が特定困難な場合もあり、就業時間内外問わずありえます。

そのため、そもそもプライベートで感染したことを会社が立証することは困難でしょうから、この点で問題があります。

●(2)プライベートでの出来事を懲戒事由にしており、懲戒事由に該当しない

会社と従業員は、労働契約に基づく関係であり、従業員はあくまで会社の労働時間内だけ会社の指揮監督下にあります。そのため、原則的に、労働時間外の私生活にまで、労働契約に基づく指揮命令を及ぼすことはできず、懲戒処分もプライベートでの出来事を理由に実施できません

ただし、例外的に、業務時間外の行為でも、会社の名誉を傷つけるような行為や、会社の秩序を乱すような行為があった場合は、懲戒処分等の対象になりえます。例として、従業員が刑事事件を起こし、報道により会社名が明らかになった場合などです。

この点、今回のケースでは、プライベートで「軽率な行動をしていた」ことが懲戒事由であるところ、そもそもプライベートでの行動が規制されていなかった事案ですので、懲戒事由に該当しません。ただし仮に規制されていても、こうした規制が無効となる余地は十分にあります。

また、ホテルの営業に支障が出ていない事案であることからも、会社の名誉が傷つけられたり、会社秩序が乱されたりした事実もないため、この点でも懲戒事由に該当しないと言えます。

(3)減給処分が労基法違反であること

労基法91条では、懲戒処分としての減給について、以下のように厳格な制限を定めています。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」

今回のケースでは、相談内容だけでは具体的な詳細が分かりづらく断定できないものの、「半年間で8000円の減給」がなされていることから、かかる労基法91条の規制に反して無効となる可能性が高いと思われます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

山田 長正
山田 長正(やまだ ながまさ)弁護士 山田総合法律事務所
山田総合法律事務所 パートナー弁護士 企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。

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