コロナ感染が怖いならば休んでほしいと上司に言われたーー。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられている。
相談者の会社では、コロナ感染対策のためにテレワークを開始。所属長経由で申請し、認められれば、在宅勤務に切り替えることができることになった。
相談者は30分の時差通勤をしていたが、電車は混雑しており、「コロナに感染するのではないか」という恐怖を感じながら通勤していた。そこで、上司にテレワークを申請。もともと内勤業務でPC作業がほとんどだったため、許可はおりると思っていた。
ところが、上司には「通勤でコロナに感染する恐れがストレスならば休んでほしい」と言われ、申請を却下されてしまったという。
このような上司の対応は許されるのだろうか。村松由紀子弁護士に聞いた。
●上司の判断が「正しい」かによって、結論は変わる
ーー相談者は、上司の判断でテレワークの申請を却下されてしまったそうです。このような上司の対応に法的な問題はないのでしょうか。
「この上司の判断が正しいか否かによって、結論は変わります。
相談者はPC作業がほとんどとのことですが、具体的にどのような業務をされているのかによって、テレワークが認められるべきかどうかも変わるでしょう。
会社の方針としてはテレワークを認めるべき人員であるのに、上司の独断で申請を却下されたのであれば、上司の判断に誤りがあるといえます。その場合には、会社の相談窓口等で相談されるのがいいと思います。
一方、セキュリティ上の理由などにより、テレワークが困難な状況なのであれば、上司の判断、ひいては会社の運用が誤っているとはいえないと思います。
この場合は、在宅勤務を認めないことが違法とはいえないため、上司が『通勤でコロナに感染する恐れがストレスならば休んでほしい』というのは、会社都合で休むのではなく『自己の判断で休んでほしい』という趣旨と思われます。したがって、仮に休んだ期間の休業補償が支払われなくても違法とまではいえないでしょう」
●判断に明らかな誤りがなければ、会社に賃金保障を求めるのは難しい
ーー「感染の危険があるのに、テレワークを認めないのはおかしい」などと考える人もいるかもしれません。
「政府がテレワーク等を要請しているとはいえ、会社には個々の事情があり、どのように運営するかは基本的に会社の判断に委ねられています。また、すべての人が会社等を休んだ場合、社会全体はまわっていきません。
極端な話、医療従事者であっても、感染の危険を理由に欠勤をする自由はあるでしょうが、その場合に賃金が支払われないことに異論はないと思います。
したがって、会社の判断に従わないで欠勤をする場合は、その判断に明らかな誤りがない限り、会社に賃金保障を求めるのは難しいと考えます。
ただ、自己判断で欠勤を続けたとしても、このような時期ですので、会社が解雇を含む懲戒権を行使することは、通常の場合よりも権利濫用となる可能性が高いでしょう」