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レジのお金が不足したらアルバイトが負担する「自腹ルール」 これって問題ないの?
アルバイトでレジ閉めを経験したことがある人は少なくないだろう。

レジのお金が不足したらアルバイトが負担する「自腹ルール」 これって問題ないの?

レジのお金が合わない場合、自腹で穴埋めしなければならないの?――弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな相談が寄せられている。

投稿によると、相談者がパート勤務しているコンビニ店では、レジに不足金が発生した場合、その時間帯の従業員が補てんする決まりになっているそうだ。わざと間違えたわけでもないのに、従業員が補てんしなければいけない「自腹ルール」に疑問を感じているという。

ツイッターでも、「バイトのレジ清算でマイナスでちゃって1800円出すとか最悪過ぎる…毎回毎回自腹とかマジないわorz」「レジ点検で−3000円だった。心当たりないけど自腹だ」など、自腹ルールに対する不満が多くつぶやかれている。

このような「自腹ルール」が勤務先のコンビニやスーパーにあった場合、パートやバイトの従業員は従うしかないのだろうか。労働問題にくわしい竹之内洋人弁護士に聞いた。

●損害は公平に分担しなければならない

「レジの金額が合わない場合の『自腹ルール』は、法的に説明すると、従業員のミスによって勤務先に生じた損害の賠償を、店側が従業員に請求しているということになります」

レジのマイナスは、店側に発生した「損害」というわけだ。すると、「自分がミスをした」と判明したなら、やはり補てんをしなければならないのだろうか。

「そうではありません。さまざまな事情を考慮して、『従業員が業務上おかしたミスで発生した損害は、使用者と被用者との間で公平に分担しよう』というのが最高裁の基本的な考え方です。そのため、使用者の損害賠償請求はかなり制限されています」

どんな風に制限されるのだろうか?

「事情は異なりますが、業務としてタンクローリーを運転していた従業員が自動車事故を起こしたことで損害を被った雇用主の石油販売業者が、運転手に損害賠償を請求したという裁判の最高裁判決が参考になります。

この判決では、従業員の業務内容や労働条件、損害が発生した経緯に加え、事前に予防策を講じていたか、保険に加入するなどの損失の分散策を講じていたかといった、さまざまな事情を考慮して、『損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の賠償または求償を請求することができる』と判示しました。

ちなみにこのケースでは、勤務先は従業員に対して、損害額の25%のみ請求できるとされています」

●損害をすべて従業員に押し付けるのは不公平

そうすると、今回の「自腹ルール」は、どのように考えればよいだろうか。

「裁判所の判断の背景には、『業務で起こりうる損害を、従業員にだけ押し付けるのは不公平だ』という考え方があります。

勤務先は、従業員を使用することで得ている利益を、すべて賃金として従業員に還元しているわけではありません。当然、勤務先自身が取得する利益もあるわけですからね」

雇用者は、利益だけでなく損害も受け入れなくてはならないということか。しかし、従業員もある程度は支払わなければならないのだろうか。

「この考え方を押し進めると、仕事をしているうえである程度は避けられない小さなミスによる損害の場合は、一切弁償しなくてよい場合もあるでしょう。

いずれにせよ、全額弁償ということはまずありえません。自腹を切って全額補てんしなくてはならないということはないと思います」

では、勤務先にキッパリ「NO」と言えない従業員は、どうすればよいだろう。

「勤務先の要求を一人ではね返すのが難しいときは、労基署に相談したり、労働組合に加入して団体交渉したりといった対策が考えられます」

竹之内弁護士は、このようにアドバイスを送っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

竹之内 洋人
竹之内 洋人(たけのうち ひろと)弁護士 公園通り法律事務所
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員

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