保育の現場で働く「男性保育士」の労働環境が話題になっている。
『AERA』(6月17日号)によると、男性保育士の割合は現在、全体のわずか3.4%。そのせいで園内設備が十分でなく、「男性用トイレがない」「更衣室がない」といったケースも多い。また、なかには「男性は困る」として、3歳未満の乳児専門の保育園から暗に入所を断られたケースもあるという。
そもそも、正式名称が1999年まで「保母」だったことに象徴されるように、「保育士は女性の仕事」というイメージが強い。ただ、今後は保育所ニーズの高まりなどを受けて、男性保育士も増えていくことが予想される。
男性が増加するにしたがって、設備や待遇は充実していくだろう。だが、それまでの間、男性保育士は「特殊な扱い」を受けることを甘んじて受け入れなければならないのだろうか。男性用のトイレや更衣室がなかったり、男性であることを理由に保育園への入所を拒むのは、「男性差別」として違法なのではないか。労働問題にくわしい東川昇弁護士に聞いた。
●男性保育士の待遇向上は時代の要請だ
「男性だけにトイレや更衣室がなかったり、性別を理由に雇用されないのは、ゆゆしき問題です。男性保育士にも、女性保育士と同様の雇用機会や待遇が確保されなければなりません」
東川弁護士はこう、キッパリと言い切る。
「男女雇用機会均等法は、『法の下の平等』という憲法理念にのっとって、男女平等な就職機会、待遇確保などを目指しています。
これまでは、もっぱら女性の権利を向上させることが、その狙いでした。それは同法1条が『女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る』としていることからも明らかです」
しかし、環境は変わってきた・・・・?
「もちろん現在でも、雇用分野での女性の権利は十分ではありません。しかし職種によっては、逆に男性側の権利が問題となることもあります。『男性保育士』のケースは、まさにそれでしょう。
均等法はもともと、制定された1972年には『勤労婦人福祉法』という名称でした。その後、時代のうつりかわりとともに呼び方が代わり、中身が何度も改正されて、現在のかたちになっています。
つまり、法の下の平等は、その時代に即して実践されなければならない。男性保育士の権利向上は『時代の要請』といえるでしょう」
機会・待遇の改善は、男性保育士たちのモラル向上にもつながるだろう。現場の男性保育士たちにはそれまで、粘り強く踏ん張ってもらいたいところだが、法律を根拠に「待遇改善」を求めていくことも必要かもしれない。