最近何かと話題の「ブラック企業」。その一角が、厚生労働省の調査で明らかになった。若者の「使い捨て」が疑われる企業などを対象に、厚労省が実態を調べたところ、なんと対象の8割以上で違法な時間外労働などの法令違反が見つかったというのだ。
厚労省が昨年12月に発表した資料によると、調査・監督は全国の5111事業場を対象に実施。全体の82%に及ぶ、4189カ所で法令違反が確認された。その内訳で特に目立ったのは、「違法な時間外労働」で、全体の43.8%にあたる2241カ所で発覚した。さらに、「賃金が支払われない残業」も、1221カ所(23.9%)で見つかった。
厚労省は指導をしたうえで、それでも違反が是正されない場合は、送検も視野に入れて対応するとしている。今回の結果について、ブラック企業問題に取り組む弁護士はどう見ているのだろうか。ブラック企業被害対策弁護団の代表をつとめる佐々木亮弁護士に聞いた。
●「ブラック企業」というネットスラングが政府を動かした
「まず、政府が、若者の『使い捨て』が疑われる企業を問題視し、立ち入り調査などを行ったことについては、高く評価したいと思います。
こうした動きが出てきたのは、若者を使い潰す『ブラック企業』の問題が社会問題として認知されたからです。政府もいよいよ腰を動かさなければならないと判断したのでしょう。
ネットスラングとして始まったこの言葉が、若者に労働問題の存在を意識させ、結果として政府を動かす原動力となったのは、すごいことだと思います」
佐々木弁護士はこのように、実態調査が行われたこと自体を高く評価する。内容についてはどうだろうか?
「もちろん、国が動いただけで満足するわけにはいきません。政府の今回の調査でさえ、8割もの企業が法令違反をしていることが確認されたというのは、大問題です。
労働基準法などの法律は、あくまで『最低基準』を定めたものです。ここにすら至ってない企業が多いということは、行政府として看過してはならないはずです」
●学校教育で「ワークルール」を教えるべき
最低ラインにすら到達していない企業が多いとなれば、改善ポイントがたくさんあると言えそうだ。今後、政府にはどのような対応が求められているのだろうか? 佐々木弁護士は次のように提言していた。
「政府がすぐにできることとしては、このような調査を継続的に行い、法令違反を厳しく指導すること、そして、その職務に当たる監督官を増強することが挙げられます。
また、根本的な解決のためには、長時間労働を規制する法律を制定したり、働く際のルール(=ワークルール)を知るカリキュラムを学校教育に取り入れることなどが、必須だと思います」