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2015年07月20日 11時40分

退社後「8時間」は会社にくるな!KDDI導入「インターバル制度」は効果あるのか?

退社後「8時間」は会社にくるな!KDDI導入「インターバル制度」は効果あるのか?
写真はイメージです。

通信大手のKDDIがこのほど、管理職でない社員約1万人を対象に、前の終業から始業まで「8時間以上」の休息を取ることを義務づける「勤務間インターバル制度」をスタートさせた。

報道によると、同社は7月からこの制度を就業規則に加えた。たとえば午前3時まで働いた社員は午前11時まで始業時間をずらす。また、休息が11時間未満の日が1カ月に11日以上あった社員に対しては、勤務状況の改善を指導し、残業が目立つ部署には是正勧告もおこなう。

規則に違反していないか否かは、パソコンの起動時間や社員が入力した出勤簿データなどで確認する。処罰規定はないが、産業医との面談や労使による委員会のチェックなどで、改善を促す仕組みになっているという。

KDDIのように、仕事の「インターバル」(間隔)を重視した制度を打ち出す企業が少しずつ現れてきているようだ。労働問題にくわしい弁護士はどう評価するのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。

●「過労死のリスクを抑えられる」

「休息時間を定めて、労働者の安全と健康を確保する『インターバル制度』は、労働時間の規制として、一つの有効な方法であると考えられます」

山田弁護士はこう切り出した。これまで労働時間の規制には、どのような制度があったのだろうか。

「労働法における労働時間の規制としては、時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)があります。

しかし、日本では、労使協定と割増賃金の支払いによって、時間外労働が可能になっています。そのうえ、特別条項を設ければ、その時間を上回って働くことすらできるため、さほど実効性のある規制となっていませんでした」

インターバル制度は、どのようなメリットがあるのだろうか。

「メリットとしては、時間を区切ることによる労働の効率向上などが挙げられます。特に直接的な効果としては、長時間労働を抑制することによって、労働者の健康面の確保が挙げられます。

厚生労働省が、過労死対策に示した『労働者の24時間』の内訳では、基本労働時間が『8時間』、通勤や食事、入浴、余暇等の生活時間が『6時間』、残り『10時間』が睡眠時間と残業時間です。

一般的に睡眠時間が『6時間以下』になると、脳や心臓疾患に伴う過労死のリスクが高まるので、厚労省基準の『10時間』から逆算すると『4時間以上』の残業は規制すべきです。

インターバル制度の実施でこの睡眠時間が確保でき、過労死のリスクを抑えられることが考えられます」

●「すべての業種に導入することは非現実的」

では、デメリットはないのだろうか。

「デメリットとしては、企業にとって、事業運営を直接制限されることとなるため、柔軟な運用ができなくなることが挙げられます。

また、労働者の中には、自分のペースでまとめて仕事を片づけた後に、まとめて休みたいという人もいるでしょう。そのような人にとって、『インターバル制度』は仕事効率を下げる要因になりえます」

将来的に、国の制度として取り入れるべきだろうか。

「法律などによって、すべての業種に一律に『インターバル制度』を導入することは、非現実的な面もあります。

また、企業の円滑な事業運営を妨げると考えられるため、慎重な検討を要すると思います」

山田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

山田 長正弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
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