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愛人が出産、夫婦関係も「共有名義の家」もグラついた…解決策の1つは「信託」
画像はイメージです(nonpii / PIXTA)

愛人が出産、夫婦関係も「共有名義の家」もグラついた…解決策の1つは「信託」

夫の不倫相手がまもなく出産する。そんな女性が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。夫婦には子どもがいますが、近々、離婚する予定です。女性が心配しているのは、夫婦共同名義の持ち家の行方です。

女性によれば、持ち家はすでにローン完済済み。持ち分は半分ずつです。愛人が産む子どもも、夫の法定相続人となりますが、この家をめぐってはどのようなトラブルが予想されるのでしょうか。またそのトラブルを避けるために、どのような対応が可能でしょうか。加藤泰弁護士に聞きました。

●「普通に考えれば円満に分けることはとても難しい」

せっかくローンを完済した持ち家があるのに離婚とはお辛いですね。相続の心配をするのは気が早い気もするのですが、あらかじめ確認しておくことに越したことはありません。

相談者が夫と離婚し、夫が愛人と結婚して子どもが無事に産まれた場合、夫が亡くなった場合の法定相続人は、「愛人(後妻)」、「相談者の子(先妻との子)」、「愛人との子(後妻との子)」となります。子の人数が仮にそれぞれ1人だとします。

そして、夫の家の持ち分は次のように相続されるとします。

・愛人:1/2 ・相談者の子:1/4 ・愛人との子:1/4

すると、妻の分も含めた家の持ち分は、次のように複雑な割合となります。

・相談者:1/2 ・愛人:1/4 ・相談者の子:1/8 ・愛人との子:1/8

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夫が死亡するときに人間関係がどのように変化しているのかは分かりませんが、普通に考えれば、この持ち分では円満に分けることはとても難しいでしょう。

●解決方法の一つが「信託」

やはり、離婚時に財産分与や慰謝料名目で夫の持ち分(1/2)を相談者が取得しておくことが望ましいと思います。

しかし、相手があることですから、夫側の意向により応じてもらえないこともあるかもしれません。離婚の際、財産分与、養育費、慰謝料といった金銭の問題は互いの生活に直結するため、揉めることがとても多く解決が難しい問題となっています。

相談者の事例でも、持ち家の処遇については互いの意見のすり合わせが難しいこともあると思います。

しかし、夫が内心では「妻には申し訳ないことをした。相談者との間の子どもには住み慣れた持ち家で成長して欲しい」「家の持ち分を最終的に相談者や相談者との子どもに譲ってもよい」と考えている可能性もあります。

もしも妻に浪費癖があって、「現時点で持ち分を渡すと持ち家を売却してしまうかもしれない」ために躊躇しているという場合には、解決方法の一つとして「信託」の活用をご紹介しておきます。

信託は「民事信託」「家族信託」という言葉で、相続分野で最近関心を集めていますが、実は離婚問題にも活用できるんです。

詳細は省きますが、「信託」という仕組みをうまく使うことで、相談者が一定期間売却できないような制限を付けた形で、夫の心情に配慮しつつ持ち分を相談者に譲渡することが可能です。持ち分を譲りたくない理由次第では、信託の活用で解決できる場合もあるかもしれません。

●離婚と不動産で注意して欲しいこと

なお、最後に一つ注意していただきたいことがあります。

離婚に伴って不動産の名義を変更する場合、不動産の用途や価値などにより課税が生じることがあります。相談者のケースが必ず該当するとは言えませんが、高額になる場合もありますので、あらかじめ税理士に相談することをお勧めします。

プロフィール

加藤 泰
加藤 泰(かとう やすし)弁護士 山下江法律事務所
早稲田大学法学部卒業、広島弁護士会所属 広島弁護士会広報室室長代理、広島商工会議所青年部会員 Twitter:https://twitter.com/39katoyasushi

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